個々のタスクに費やす時間を管理することで、より少ない時間でより多くのことを成し遂げられるようにすることが、時間管理をするということです。
時間管理をマスターしている人にも、時間管理を実践していない人にも、誰にでも平等に、時間は刻々と過ぎていきます。時間が進めば進むほど、時間管理をしているかしていないかで、仕事の進み具合に大きく差が付くことになります。
人生や仕事、プロジェクト管理などにおける時間管理とは、時間そのものを管理するのではなく、限られた時間の中で、何に焦点を当て、何に自分のエネルギーを費やすかを管理することです。
時間管理・タイムマネジメントとは何か
WikiPedia日本語版には、なぜか「時間管理」も「タイムマネジメント」もありません。どれだけ長時間働いたかで残業代を得られる日本では、時間を管理するという概念がそもそもないのか、時間管理の意識が薄いのかもしれません。
実際、日本人の時間あたりの労働生産性は、国際的に低い水準に留まり続けており、OECD平均より常に低く、先進7カ国で万年最下位です。

日本社会の労働環境は非常に悪く、今後よくなる兆しすら見えないのですが、仕事に時間管理を採り入れることによって、多少はマシになり、うまくいけば先進国並みの生産性を産み出して、生活の質を向上させることも不可能ではありません。
さて、WikiPedia日本語版には「時間管理」も「タイムマネジメント」もないので、英語版を参照すると、Time managementとは「特に効果、効率、生産性を高めるために、特定の活動に費やされる時間を計画し、意識的にコントロールする工程」とのことです。
つまりこれは、以下のようにまとめることができるでしょう。
- 利用可能な時間を効果的に使う
- 活動に使う時間を管理する
- タスクの優先順位を設定する
- 優先しないタスクに費やす時間を短縮する
従って、時間管理・タイムマネジメントは、集中力に割り当てられる自分のエネルギーの管理とも言えます。時間を伸ばしたり縮めたりすることはできないので、限りある集中力を費やすことのできる重要なタスクにのみ、時間を割くということです。
時間管理の実践
利用可能な時間を効果的に使うために、様々な実証済みの方法が無数にあります。その一部を紹介します。
1. ToDoリストをつくる
フリーランスは、本業だけに集中していればよいわけではありません。例えばWebデザイナーは、Webデザインの作業だけをしていても、仕事として成り立ちません。経理などの事務処理や、総務・営業・会議などのコミュニケーションなど、ビジネス全般のスキルが必要です。それに、人生には、家事、育児、趣味、睡眠など、すべきことが山のようにあります。
ToDoリストは、タスクに集中するのに役立ちます。ただし、リストをつくるには、以下に注意しなければなりません。
- 重要なタスクと重要でないタスクとを分ける
- 重要なタスクを優先する
- タスクに期限を設ける
- タスクに費やした時間を記録する
- タスクの数を制限する
2. 優先順位をつける
時間は限られていて、気を抜くとあっという間に浪費してしまいますので、どのタスクに先に取り組まねばならないかを明確にしなければなりません。タスクを実行するには集中力が必要になりますが、集中力は時間とともに失われていきます。従って、一日のうち集中力が最も高まる時間帯に、重要なタスクに取り組むのがベストです。そのため、タスクに優先順位を付けていきます。
- その日行うべきすべてのタスクをリストアップします。
- アイゼンハワーマトリックスなどを用いて、タスクの重要性や緊急性を確認します。より詳細に分類する必要があれば、シックスシグマでアプローチするのがよいでしょう。
- 重要度や緊急度の高いタスクが、ビジネスにもたらす価値を評価し、優先順位の高いタスクを特定します。
- 優先順位が同等のタスクは、労力や工数がかかるもの、あるいは、自分やチームにとって都合の良いものを優先します。
3. タイムブロッキングを用いる
タイムブロッキングとは、ひとつのタスクに集中するために、1日や1週間を時間のブロックに分けて、それぞれのブロックにひとつずつタスクを割り当てることです。
例えば、以下のようなものです。
- プロジェクトを進行している場合、1日の最初の1時間をプロジェクト管理計画の検討に費やし、マイルストーンが達成されているかを確認する。
- ブログコンテンツを定期的に更新している場合、1日の最初の2時間をコンテンツ作成に充てる。
- 午後3時から1時間を、メールの返信に充てる。
- 複数のプロジェクトを進行している場合、月・水・金曜日をひとつのプロジェクト、もうひとつを火・木曜日に行う。
タイムブロッキングを行っても、計画通りにタスクが進まない場合も出てきます。しかし、タイムブロッキングの利点は、スマホを見たり、チャットやメールをチェックしたり、YouTubeを見たりして、時間や集中力を無駄にしないことにあります。
4. マルチタスクをしない
マルチタスクは、行っているすべてのタスクが非効率になるので、すべきではありません。2.5%の人が複数のタスクをパフォーマンスを低下させずに行えるとのことですが、大部分の人にとっては、マルチタスクは生産性を下げます。
ですので、ひとつのタスクに集中しなければなりません。目の前のすべきことに全力を費やすべきです。
5. 時間を追跡する
どのように時間を使っているかを知るのは、極めて重要です。
- 実際に仕事をした時間は何時間か
- 家族や友人と過ごす時間をとっているか
- 週末は休息しているか
- ずっと温めているプロジェクトを進めないのは時間がないからか
時間を追跡し、記録していれば、こういった疑問に、すぐに答えることができます。そして、生産性や生活の質の向上につながる変化を起こすことができるようになります。
6. 任せる
プロジェクト管理をしているのであれば、仕事を他の人に任せる能力は必須です。進捗管理やレポート作成などの仕事も、他の人に任せることができます。逆に、特定の作業に集中するために、プロジェクト管理を他の人に任せることもできます。
自分にとって価値があり、重要なタスクを遂行するための時間と集中力を確保するために、それ以外のタスクを他の人に任せます。
7. 断る
「仕事の打診を断ると今後の取引に影響が出る」などと思ったり、業績が思わしくないときに、無理に仕事を引き受けてしまうこともあるでしょう。
しかし、1日にできることは限られています。無理に受けた仕事を完了できずに、クライアントに迷惑をかけたり、品質の悪い製品を納品して評判を落としたりすることがあります。
追加の仕事やプロジェクトを断るタイミングを見極めることが大事です。
時間管理を実践すべき4つの理由
時間管理・タイムマネジメントを実践して時間を最大限に活用することには、多くのメリットがあります。ここではそのうちいくつかをご紹介します。
1. ストレスを減らす
時間に追い立てられていると、ストレスが溜まっていき、精神健康的によくありません。納期に間に合わなかったり、金銭的なトラブルに巻き込まれたり、体を壊してしまったりして、さらにストレスが溜まっていきます。
時間管理・タイムマネジメントを実践して、うまく時間を使えるようになれば、ストレスからも開放され、より少ない時間や労力で、より多くのことを達成できるようになります。
2. ワークライフバランス
時間管理をすることによって、仕事と生活のバランスを取ることができます。優先すべき重要なタスクと重要でないタスクとを分けることによって、後者を人に任せたり、あるいは自動化を進めたりすることで、仕事の時間を減らし、プライベートを充実させることができます。
3. 生産性を向上させる
時間管理の主目的のひとつは、生産性を向上させることです。タイムブロッキングのテクニックや、重要でないタスクを人に任せることで、生産性を大きく高めることができます。
4. チャンスをつくり出す
時間管理・タイムマネジメントで仕事の時間を減らせるのであれば、さらに仕事を追加することができます。もちろん、重要でない仕事を引き受けすぎるのは本末転倒で、そうではなく、新しい挑戦しがいのある仕事に取り掛かることができたり、余裕のなかったときには思いつかないアイディアを思いつくチャンスもできます。
時間管理・タイムマネジメントで人生を豊かにする
長時間一所懸命に働くことで評価を得ようとする人もいれば、賢く働き時間を増やそうとする人もいます。どちらの人にも同じだけの時間が与えられますが、「一所懸命」ではなく「賢く」働いたほうが、心身健康的にも人生においても価値があります。
失ったお金は取り戻すことができますが、失った時間は取り戻せません。そして、新型コロナで影響の大きい中小企業、個人事業主やフリーランスを含む小規模企業者は、危機を乗り越えるために、そして人生を豊かにしていくために、積極的に時間管理・タイムマネジメントを実践していくべきでしょう。