営業活動を経験していれば、契約書にサインしてもらうまで行き着くのは難しいと感じることがあるでしょう。あらゆる業界で、製品やサービスのソリューションが問題解決に有効だと潜在顧客に証明するには、様々なスキルや知識が必要です。
営業活動をする上で、販売サイクルを定義するのは、セールスファネルを通過するリードに合わせてカスタマイズする必要がありますが、よい手がかりになるはずです。
以下では7ステージとしていますが、10ステップになることもありますし、20ステップに及ぶこともあります。
販売サイクルとは?
販売サイクルとは、リード生成(リードジェネレーション)から販売完了までの、製品販売に関わる一連の手順、販売プロセスの集合が販売サイクルです。
販売サイクルは、マーケティング戦略や販売戦略によって異なりますが、大まかな特徴は共通しています。
販売サイクルの各ステージと、それを使いこなすヒント
販売サイクルには7つのステージがあり、特にB2Bセールスにおいては、販売を成立させ、顧客を維持するために、それぞれのステージが非常に重要となります。
1. プロスペクティング
何もかもを自分ひとりで進めなければならないフリーランスにとっては、集客や営業が足かせとなるかもしれませんが、何をおいても、まずは新規顧客開拓、すなわちリードの生成が必要です。そのリードを適格化してプロスペクト(見込み客)とするプロスペクティングが、最初のステージとなります。
業務を始めたばかりの頃は、ランサーズやクラウドワークスなどのクラウドソーシングプラットフォームを使うのもアリですが、事業を拡大したり収入を増やしていこうとするならば、単価が安い上に大きな手数料がかかるクラウドソーシングを使い続けることはできません。
Webサイト、コールドメール、コールドコール、Youtube、Twitter、Instagramなど、様々なマーケティングチャネルから自分や自社、それに理想的な顧客像に合致する人が使うチャネルを選び、リードを集めなければなりません。
このステージでは、理想的な顧客像を作成しておくことが極めて重要です。どうあっても購入してくれない人や会社にアプローチすると、以降のステージが全く無駄になってしまいます。
なお、このステージを、リード生成とリード適格化の2ステージに分割して設計するのも良い方法です。
プロスペクティングのヒント
- 顧客プロファイルを作成する
- リードが自社製品・サービスを購入する可能性があるかどうかを判断するためには、理想的な顧客像が必要です。その顧客プロファイルに合致しているかどうかによって、成約率が大きく変わってくるはずです。
- リードの適格化
- SQL、MQL、PQLといった適格リードはご存知かもしれません。リードは適格審査のプロセスを経て見込み客に変わります。購入する意思のあるリードを特定して、売り込みを集中して行わなければなりません。
- データを記録する
- すべてのデータは、うまく行ったプロセスを再現するために、そうでない場合に改善するため、記録しておきます。
2. ファーストコンタクトをとる
新規リードに声をかけるのは大変なことですが、一度無視されたり断られたからといって、諦めるべきではありません。大抵は失敗するものと認めて、淡々と機械的にコンタクトを取り続けるべきです。
50万通のセールス電子メールを分析したYeswareの調査が面白いのですが、1通目の返信率が30%、2通目からは次第に返信率が下がり、9通目には6%にまで落ち込みます。

しかし、10通目には7%となり、下げ止まっているのが見て取れます。
この調査から分かることは、継続してフォローアップを行う価値があるということです。電子メールを送れば送るほど返信率は下がりますが、「迷惑だからもう送らないでくれ」と完全に拒否されるまでは、チャンスがあります。
アポイントを取れるまで、粘り強くアプローチすべきでしょう。
ファーストコンタクトのヒント
- 売り込みをしない
- いきなり製品を売ろうとしてもほぼ断られます。ターゲットを調査して、信頼関係を築く方向で話を進めます。
- ミーティングの約束をする
- 1回や数回の会話では、リードのニーズを明確にすることができません。詳細を話す機会を作るために、ミーティングの約束を取り付けます。
- 自動化する
- 電子メールの送信は自動化します。アポイントもカレンダーに登録し、ダブルブッキングのないようにします。一連の行動を自動化すれば、同時にリード管理もでき、営業に丸1日費やさなくて済みます。
3. リサーチし、ニーズを特定する
説得力のある売り込みをするには、リードのニーズを明確にすることが大切です。
製品・サービスの機能や価格を強調したくなりますが、価値にフォーカスを当てます。ニーズを特定しておくことで、競合よりも優位に立てます。
将来的に自社や商品の評判を落とす顧客を排除し、信頼できる顧客を見つけるためには、ANUMやBANTフレームワークなどを活用し、MQL、SQLなどの適格審査を厳格に行う必要があります。
製品やサービスが顧客の抱えている問題を本当に解決するかどうか、最もうまく対処している問題は何か、業界を間違えていないかどうかなどを、厳密に判断しなければなりません。相応しくない人や会社に自社製品やサービスを提供すべきではありません。
リードを徹底的にリサーチして、そのビジネスやニーズを深く理解し、関係構築に重点を置く方向で進めます。
リサーチとニーズ特定のヒント
- 相手の状況を理解する
- 購買決定権を持っているかどうか、必要性があるかどうか、緊急性があるかどうか、購入できる資金があるかどうかを完全に特定しなければなりません。
- できるだけ情報を引き出す
- リードの話を理解するために必要なことは何でもします。重要なことが抜け落ちていないか、誤解がないかを確認します。そうすることで、次のステージに備えられます。
- リードにとって成功とは何かを探る
- 企業はより多くの利益を求めていますが、依頼しようとする仕事、製品やサービスに求めているのは、そこから得られる直接的な利益ではないこともあります。リードがどのように成功を評価するかを把握します。
4. プレゼンテーションする
より本格的なミーティングが決まったら、リードの問題と、それに対応するソリューションを説明するプレゼンテーションを用意します。
注意すべきは、製品やサービスが、どうやって問題を解決するかではなく、なぜ問題解決に効果があるかを説明することです。
最終的に、製品を導入した場合の環境を想像してもらえるようにします。
プレゼンテーションのヒント
- 問題から始める
- このステージの最初の手順は、リードが抱えている問題のうち、製品やサービスで解決できる問題を提示して、リードの興味を引きます。最初にリードの「なぜ」に答えます。
- 価値を紹介する
- 製品の機能ではなく価値を要約して紹介します。製品やサービス導入後の結果を想像させることに集中します。
- 製品を紹介する
- なぜ製品の価値が問題の解決策になるのかを強調します。
- 証拠を示す
- これまでの実績を、具体的に数字を伴わせて示します。製品やサービスを導入したことで問題を解決できた顧客の喜びを表現します。
- 質問する
- リードのビジネスや現状について、自由に質問します。リードが決断を下すのに十分話しを聞いたか尋ねます。
5. 反対意見を克服する
セールスでは、リードからの反対意見が常にあり、プレゼンテーションに限らず、販売サイクルの複数のステージで反対意見が出ることもあります。
反対意見を避けて通ることはできませんので、反論に備えて準備しておけば、それを乗り越えることは可能です。一般的には、予算や時期にまつわるものですが、他にも以下のような反対意見が出てきます。
反対意見を克服するヒント
- 競合他社の問題
- リードがすでに他社製品・サービスを利用している場合、他社の弱点と自社の優位点や独自の利点を証明します。そのためには、他社や現状の調査が必要です。
- 信頼の問題
- 会社の評判や、事業を続けてきた期間など、信頼に疑念が生じることがあります。これを克服するには、製品やサービスがリードの問題を解決し、成功に導く証拠を示します。また、自社ビジョンに合致する人々にフォーカスします。
- 現状維持の問題
- 現状に満足している場合、変更には抵抗が生じます。担当者が責任を問われることを恐れたり、どの程度成功するかに疑問に思うこともあります。サポートの充実や過去のサクセスストーリーを紹介したり、将来のビジョンを共有します。
- 購買力の問題
- 長い時間交渉したにもかかわらず、担当者に購入権限がなかったり、予算を渋られることもあります。主要な利害関係者・意思決定者と話す必要があります。
- 必要性の問題
- 相手が製品やサービスを必要ないと言った場合、ビジネスにどれだけの価値を追加できるかを示します。そのためには、リードが抱えている問題や課題を、リードに明確に認識させることです。
6. クロージング
見込み客との契約を勝ち取り、契約書にサインしてもらうステージが、クロージングです(この時点では、適格リードの過程を経て、リードは見込み客になっていることが多いです)。
クロージングには時間がかかります。見込み客は、ソリューションを社内に持ち込み、ビジネス戦略に沿っているかどうかを承認します。結論を急かすと関係が崩れることもあります。
見込み客のことを忘れていないことや、一緒に事業を進めようと真剣に考えていることを、見込み客に伝えなければなりません。成約に近づけるような価値ある情報を送って、連絡を取り続けます。
クロージングのヒント
- クロージングの武器を複数持つ
- どのようなクロージング手法が最も効果的であるかを見極め、いくつかの手法を覚えておくことで、あるクロージング手法がうまくいかなかった場合でも、別の手法を試すことができます。
- すぐに契約できるように準備しておく
- すぐにサインできる書類を用意し、製品やサービスを手に入れるのは簡単だと思ってもらうようにします。
- 返事が来ないときでも焦らない
- 間違えても「こちらも忙しいので」とか「急いでいるので」とか、自分の都合を押し付けないことです。「決定までのスケジュールは?」「決める前に何か必要なものは?」など、質問をして会話のきっかけをつくります。
7. フォローアップ
契約後にうまく行かなくなる場合もあります。顧客の気持ちが変わってしまったり、数カ月後にニーズに合わないと判断され、使われなくなってしまうことがあります。
顧客が製品やサービスを使いこなしてもらえるように、役立つリソースやトレーニングを提供するなど、連絡を取り続ける必要があります。
フォローアップのヒント
- 純粋な興味を示す
- 製品やサービスをどのように使っているかを尋ね、たとえそれが非常にネガティブな内容であっても、顧客の話に静かに耳を傾けます。常に顧客の意見に同意し、顧客が不満を感じている場合には、すぐに対応します。
- アップセルの機会を探す
- 新規の顧客よりも既存の顧客に販売する方が常に簡単です。追加の機能やサービスを提供する機会を探します。そのためには、顧客の期待を上回るサービスを提供することが必要です。
- 紹介者を増やす
- 自信を持って紹介を依頼するのは難しいものです。そのためには、顧客が紹介しやすいように、紹介のプロセスを合理化しておくことです。
販売サイクルに沿う
販売パイプラインを効果的に管理するには、販売サイクルに沿い、販売プロセスを首尾良く進めていきます。
販売サイクルを遵守しなければ、売上予測も立たず、潜在顧客も次々逃していくことになります。
事業を継続して成功に導くには、ビジネスを組織化し、販売プロセスをつくりあげる必要があります。
事業を始めたばかりのときや、独立してフリーランスになったときは、とにかく顧客を集めようと必死になるでしょう。取引を成功させるためには、やみくもに潜在顧客を探して売り込むだけでは不十分です。
理想的な顧客像に合致したリードにアプローチし、リードのニーズを慎重に定義し、アポイントメントを効率化し、よりスマートでターゲットを絞ったセールスピッチを行う必要があります。
最後に
2023年から、事業を営んでいれば、収入問わず消費税を納めなければならなくなりました。
フリーランス・自営業者の収入は、雇用者と大きく変わるものではありませんが、その年収ボリュームゾーンは雇用者より少々低いレベルとなっており、平均年収より高い人が少ない傾向です。
年収200~300万円の人が最も多く、消費税をざっくりと20~30万円支払わなければならなくなります。上昇し続ける消費税以外の税金、年金、保険などに加えて消費税を徴収されるのですから、収入が低ければ低いほど、昨今の物価上昇も加え、ますます生活が厳しくなることが想定されます。
社会を構成しているのは個人ですが、社会の仕組みを作っているのは政治です。政治の主体は政治家ではありません。日本の人は、状況に合わせようとする傾向が強いようですが、この先何十年も日本で暮らすのでしたら、政治に関心を持たないと、現状維持すら不可能です。
仕事は「もらう」ものではなく「つくる」ものです。マーケティングやセールスがどうしても必要です。そして、その仕組みを作り、ルーチンワークとして取り組んでいかなければなりません。