製品のポジショニング

製品ポジショニング戦略の作りかた

大量の競合製品がある市場では、自社製品やサービスを他社のそれと差別化することが重要です。この初心者向けガイドでは、製品のポジショニング(プロダクトポジショニング)戦略の作り方を説明します。

さて、自社の製品やサービスが画期的な利点を持っていたり、他社より圧倒的に優れていると考えていたとしても、社外の人々が同様に同じ認識を持ってくれるとは限りません。しかし、製品やサービスにポジショニング戦略を用いれば、社外の人々、すなわち顧客に、社内と同じ結論に達してもらうことが可能です。

製品ポジショニング戦略とは?

製品ポジショニング戦略とは、あるターゲットオーディエンスに、製品やサービスの利点を提示する、ビジネスのマーケティングを向上させるための取り組みであり、ポジショニング戦略の一形態です。

製品ポジショニングは、中小企業や、フリーランスや個人事業主を含む小規模企業者のマーケティング計画に、市場における方向性の明確化と差別化とを与えるものです。

調査と計画の段階で、自社の製品やサービスが市場のどの位置に適合するかを見つけ、その後、戦略的にテストと検証を行うことで、自社の製品やサービスが他社となぜどのように異なるのか、なぜ優れているのかを明らかにしていきます。

実際のテストやこれに基づく検証や改善は、マーケティング戦略の基本であり、マーケティング活動を本格的に始める前に、方向性や方針を明確にするために行います。

製品ポジショニング戦略を立てる前に、この戦略を立てるために必要なものがあります。

ビジョンとミッション

製品のポジショニングステートメントと、企業のミッションステートメントは、非常に密接に結びついています。企業にビジョンやミッションがあるように、製品やサービスにもミッションやビジョンがなければなりません。ビジョンとミッションがあれば、より綿密で計画的な方向性を生み出すことができ、計画が実現に向かいます。

市場での位置づけ

マーケティングの4原則(4P)を明確にすることは基本ですが、これは、製品やサービスの市場におけるポジショニングにも同様に当てはまります。市場を知り、ターゲットとなる顧客を知ることで、的確なマーケティング活動を行うことができます。

顧客が抱える悩み

顧客が解決したいと思っている悩みを理解し、その悩みを製品やサービスがどのように解決するかを理解していることが、製品ポジショニング戦略をつくりあげる際に効果があります。顧客が解決したいと思ってもいない問題の解決策を提示したところで、製品やサービスは受け入れられません。

注意すべきは、顧客が自身の悩みに気づいていない場合で、スティーブ・ジョブズの言葉を引用します。

顧客に製品を示すまで、彼らはなにを望んでいるかを知りません。(中略)私たちの仕事は、まだページに載っていないものを読むことです。

製品の分析

自社製品は他社の製品よりもどう優れているのかを検証することで、製品やサービスのどの面を強調すべきかが分かります。逆に、自社製品の欠点を知っていれば、予め防御策を講じることができます。また、市場に投入する際の適切な価格設定にも役立ちます。

製品ポジショニング戦略の立て方

製品ポジショニング戦略の概要がわかったところで、次のステップに進みましょう。これは、B2CあるいはB2Bのどちらのマーケティング戦略を考えている場合でも、ほぼ同じステップとなります。

1. 市場調査を行う

製品ポジショニングにしても、ブランドのポジショニングにしても、本格的に計画し進めていくには、どのような市場分野で販売するのか、そしてそこにはどのような競合がいるのかを知らなければ始まりません。

中小企業や小規模企業者、個人事業主やフリーランスを含めますが、市場調査を外部の企業に依頼する余裕がない場合が多く、大企業に比べると、ローカルマーケティング戦略はハンズオン、すなわち、自らマネジメントに携わらないとなりません。

ここで重要となるのは、クライアントとの対話です。良好な関係を築いていて、正直で洞察に富んだ回答をしてくれそうな信頼できるクライアントを、複数選び出すことが最善です。話を聞ける時間を確保して、主要となる顧客層やインサイト(洞察した顧客の潜在的な要求)を明らかにするための質問をいくつかしてみましょう。

例えば次のような質問です。

  • 年齢は何歳か
  • 教育レベルはどのレベルか
  • 業務の主な目的は何か
  • 趣味は何か
  • 最大のビジネス上の問題点は何か
  • 最大のビジネス目標は何か
  • 情報の取得先はどこか
  • 新しい製品を購入する際、どのような情報を考慮するか
  • 家族や知人に弊社を推薦する可能性はどの程度か
  • 弊社(や弊社の製品やサービス)はどのような問題を解決するか
  • 競合他社ではなく弊社を選んだ理由は何か
  • などなど…

スティーブ・ジョブズは先に引用した中で、「市場調査には頼らない」と言っていますが、市場調査結果から、顧客の言葉の背後を推し量ることができます。

市場調査を行う際のヒント

熱狂的なファンのサンプルだけを見ることのないようにすべきです。このようなクライアントは、存在しても全体のごく少数であり、クライアントの大部分は、多少なりとも何らかの不満を抱えています。ほとんどのクライアントは、他によい製品あるいは気になった製品があれば、躊躇せずに乗り換えます。こういったクライアントの意見にも耳を傾け、自社製品の課題としていきます。

もちろん、あらゆる意見を採り入れて製品に反映しようとするのは、様々な顧客の様々な要望を叶える製品は存在し得ないので、避けるべきです。

2. 顧客をセグメントに分ける

クライアントの情報を集めた後は、顧客をさらに細かく分類していきます。

マツダのオープンスポーツカーであるロードスターは、若い男性をターゲットにしていますが、若い男性のみに販売してはいません。女性もいれば壮年の男性もいますし、価格が安いからと言って、必ずしも所得の多くない人ばかりではなく、運転の楽しみを求める収入の多い人も顧客です。日本人だけではなく世界中の様々な顧客が存在しています。

そして、それぞれの顧客が異なるプロフィールを持っていて、それぞれに適したマーケティングメッセージの発信方法があるわけですから、マーケティングのターゲットをより明確にすることで、適切な人に適切な情報を適切なマーケティングチャネルで提供することができます。

顧客をセグメントに分ける際のヒント

電子メールマーケティングソフトでもよいですが、やはりCRMソフトなどを使うのがよいでしょう。優れたCRMソフトは、人口統計データを調整することで、複数のデータポイントを表示したり整理できるので、顧客をセグメント化するのに役立ちます。

3. セールスポイントを見つける

第1のステップで集めた情報を使えば、自社製品やサービスが、どのようにしてクライアントの要望を満たすことができるかを、明らかにできます。また、何かしら不満を抱えたクライアントの反応から、自社製品の欠点、そして、市場の傾向や穴を見つけ出すことができます。

これらを参考にして、自社製品の特質を把握していきます。製品やサービスの機能や利点だけではなく、収集した意見に対し、製品やサービスをどのように反映させていくかを意識します。

セールスポイントを見つける際のヒント

自社製品の差別化やセールスポイントは、現状の製品やサービスのものでなければなりません。製品やサービスの進化に合わせて、顧客へのメッセージを更新していきます。そして、顧客にとってどうでもよい、顧客が抱える問題と関係のない問題の解決策を提示するのは意味がありません。

また、セールスポイントを裏付ける証拠が必要です。例えば、ケーススタディ、データ、ホワイトペーパー、お客様の声、実際に試すことができる試用品・体験版などです。これによって、製品やサービスの信憑性が増し、信頼に繋がります。

4. ポジショニングステートメントを作る

ポジショニングステートメントは、ミッションステートメントやブランドステートメントと似ていますが、より具体的で実行可能な、詳細な計画の文言を含んでいます。

優れたポジショニングステートメントには、目標やターゲット顧客、差別化要因や製品やサービスの使命などが含まれます。ポジショニングステートメントは、マーケティング目標を強化し、マーケティング戦略の方向性を示します。

ポジショニングステートメントを作る際のヒント

「社名」「会社やブランドや製品やサービスが行うこと」「ターゲット顧客」「差別化要因」「証拠」を具現化し、穴埋め方式で短い文章にまとめていきます。

5. 見直し、修正し、適用する

自社ブランディングと照らし合わせて、ブランディングとポジショニングステートメントとが一致しているかどうかを確認します。すべてがまとまっていることを確認しましょう。

一度でうまくいく場合もありますし、多少の手直しで済むかもしれません。あるいは、ブランディングとポジショニングとの矛盾に気づき、ブランドもしくはポジショニングあるいはこれら両方を変更しなければならないこともあります。

見直し、修正して、全体の方向性とデジタルマーケティングの方向性とを一致させることで、ビジネスの取り組みがスムーズに進みます。

製品ポジショニングの導入には、適切な価格設定、発売に向けての準備、一貫したメッセージで作成した電子メールマーケティング計画などを確認する必要があります。

ターゲット市場に対し、最も適した時間や場所や手段に絞り込み、送るメッセージは、実用的でパーソナライズして説得力をもたせ、マーケティング戦術の実行後も継続的に注視して必要に応じて調整していきます。

見直し、修正し、適用する際のヒント

できるだけ多くの信頼できる人に確認してもらうのがよいでしょう。実際に製品やマーケティングに生かせる意見をもらうことができれば、マーケティング計画の明確さを確認できます。採用するかどうするかは別として、参考にできる意見は多いほうが役立ちます。

製品ポジショニング戦略の成功例

任天堂「Wii」
今までターゲットとしていなかったゲームユーザー以外の大人や小さい子どもを狙って大ヒットしました。
アキレス「瞬足」
運動会で早く走れることだけにターゲットを絞り込み、小学校低学年に爆発的な大ヒットとなりました。
資生堂「シーブリーズ」
若い男性から女子高生にターゲットを変え、場所も海から日常へ変えることで、新たな市場を産み出しました。
サントリー「プレミアムモルツ」
週末に家庭でおいしいビールをというメッセージに変えることで、市場1位のヱビスビールを抜いてトップに君臨しました。
カルビー「フルグラ」
一般的なシリアルの市場から朝食の市場に変えることで、爆発的なヒットとなりました。

製品ポジショニング戦略のまとめ

製品ポジショニング戦略を策定するには様々な要素が、そして、ビジネスそのもののポジショニングには、さらに多くの要素の検討が必要となります。

ただし、上記ステップのように行うことで、ポジショニングの主要な要素が明確になります。人口統計、問題点と解決策、広告チャネル、価格などの各要素を、それぞれ関連付けられるように決めていけば、製品ポジショニング戦略は、ビジネスの成功への一歩となります。

芦屋 ときお

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ソフトウェアエンジニア(フルスタック、主にWeb系)。HTML, CSS, JavaScript, TypeScript, PHP, Python, Go, Vue.js, Express, Node.js, Nuxt, Next.js, Laravelなど。C#, ActionScriptも。デザイン、デジタルマーケティング。