ポジショニング戦略

ポジショニング戦略:顧客にブランドを思い起こさせる方法

ビジネスがうまくいくかいかないかは、市場において自社ブランドの位置づけを明確にできるかどうかにかかっています。これが成功すると、製品やサービスが顧客に受け入れられ、競合他社との差別化をはかることができるため、ビジネスにおいて重要なスキルとなります。

Appleと言えばiPhoneを思い浮かべる人が多いと思いますが、Appleと聞いてiPhoneを思い浮かべるこれこそが、ポジショニングの意味です。頭の中、心の中で、AppleとiPhoneが結びついているわけです。OnePlusと言えば、インドでは誰もが、廉価にもかかわらず高性能なスマートフォンと答えるでしょうが、日本ではそうは行きません。日本でのポジショニングが確立されていないからです。

OnePlus 9 Pro, iPhone 12 Pro Max
OnePlus 9 ProとiPhone 12 Pro Max / by Phone Arena

ポジショニング戦略がなければ、ビジネスの意図と異なる評価が広まります。そして、一度定着したポジショニングを変えることは、非常に困難です。だからこそ、ポジショニング戦略の策定は不可欠なのです。

ここでは、主に中小企業や小規模企業者向けに、ポジショニング戦略について説明していきます。

ポジショニング戦略とは?

ポジショニングとは、ブランドが顧客の頭や心の中でどのように認識されているかを指します。マーケティング戦略の一形態であるポジショニング戦略とは、ブランドのイメージや個性・特性を顧客に認識させる戦略です。

ポジショニング戦略は、顧客がブランドに抱くイメージに影響を与えます。ただし、顧客が信じてもいない考えを、いきなり顧客に植え付けることはできません。すでに世に出ているポジショニングはある程度確立されていますから、顧客の心にあるイメージと同期している必要があり、それに基づいて戦略を構築することになります。

例えば、中小企業向けに売り込みたい法律事務所は、自社のサービスを「中小企業のニーズに合わせた」「速くて」「リーズナブルな」とポジショニングすることがあるでしょう。というのも、このようなポジショニングを行わないと、(潜在)顧客は、「ほとんど役立たないサービスに高い料金を支払わなければならない」というポジショニングをつくってしまう可能性があるからです。こうなってしまうと、顧客はサービスを利用しなくなります。

一方、法律業務に仕事を依頼する際には資料が必要で、クライアントは資料の準備に手間と時間がかかりますが、「お客様に手間をかけない」というポジショニングをとってしまうと、信憑性に欠けますので、サービスから顧客を遠ざけてしまいます。

また、ポジショニングは、ブランドをどのように顧客に提示するかについて、組織における整合性を保つ役割もあります。これは、マーケティング戦略において、特に、基本的なマーケティング戦術に使われるコンテンツに影響してきます。B2Bマーケティング戦略にとってポジショニングは重要なものとなり、B2Bの営業においても、販売プロセスや販売手法に影響してきます。

そのため、ポジショニング戦略が十分に練られていないと、ブランドを顧客に伝える際、担当者ごとに一貫性のない異なったメッセージを伝えてしまう危険が出てきます。一貫性のないメッセージは、顧客に混乱や不信感を与え、顧客をブランドから遠ざける原因となりますので、前もってポジショニング戦略を確立しなければなりません。

ポジショニング戦略の5つのメリット

適切なポジショニング戦略を構築できれば、より優れたマーケティングメッセージを作成できたり、より好ましいサービスを提供できたり、競争力のある価格体系を構築することができます。ここでは、マーケティングにおけるポジショニング戦略の5つのメリットをご紹介します。

1. 強力な競争力を持つことができる

ポジショニングを適切に行うと、顧客が自社の製品やサービスと競合他社とを比較したときに、顧客がどのように認識するかをコントロールすることができます。顧客の心に製品やサービスの良いイメージを作ることができれば、継続的に市場での優位性を得ることができます。競合との競争において自らのポジションを主張することで、競争力を得ることができます。

2. 売上を向上させることができる

ビジネスの主要な目的は、売上と収益を向上させることです。適切なポジショニングをとることで、より適切なサービスを提供し、より効果的にメッセージを伝えることができるため、新しい市場に参入することができたり、新規顧客や追加の売上につながっていきます。

3. より明確なターゲット市場を定義することができる

顧客は特定の問題を解決するために製品やサービスに興味を持ち、購入するのですから、あらゆる顧客のあらゆる問題を解決しようとしても、マーケティング戦略は上手くいきません。ポジショニングにおいて、ある特定の機能やメリットを主張し、これに合わせて製品やサービスを絞り込むことで、顧客にとってのブランドの価値が向上します。

4. より効果的な意思決定ができる

ポジショニング戦略を成功させるためのコアメッセージがあれば、より効果的な意思決定を行うことができます。また、ポジショニングを明確にすることで、顧客との効果的なコミュニケーションが可能となり、顧客との繋がりがより強固になります。

5. 顧客の要望に応えることができる

ポジショニングを明確にすることで、自社の製品やサービスが提供する利点を顧客に伝えることができます。これは、製品やサービスを最適化する効果のみならず、製品やサービスと、それを必要とする顧客とを結びつける効果があります。

ポジショニング戦略の7つの種類

ブランドのポジショニングを確立するには、ポジショニング戦略が必要です。ポジショニング戦略にはいくつかの種類がありますが、ここでは、ビジネスに活用できる代表的なポジショニング戦略をご紹介します。

1. 製品やサービスの特性に基づくポジショニング

製品やサービスに基づいたポジショニングはごく一般的なものとなります。これは、製品やサービスが顧客の抱える問題をどのように解決するかに焦点を当てるものです。

自動車業界では、レクサスは「信頼」、ポルシェは「性能」、ボルボは「安全」、BMWは「運転」として顧客に認識されており、一貫して製品の独自性や利点を顧客に伝え続けています。

2. 価格によるポジショニング

プレミアムブランドとして、あるいは格安ブランドとして、価格面から、自社の製品やサービスと競合他社とを差別化することができます。市場を分析して、ある価格帯に製品やサービスが欠けている場合、その価格帯でのポジションをとると、市場において唯一の選択肢となることができます。

同じく自動車業界において、ロールスロイスは極めて高額で、その価格を含めて、顧客が感じる魅力やブランドアイデンティティの一部となっています。

3. 品質や高級によるポジショニング

顧客は、価格が高いほど品質も高いと思いがちです。そして、製品やサービスの価格と品質とが一致することがよくあります。しかし、高品質であること、高級であることは、価格を基準にしたポジショニングとは異なります。

大抵の場合、高品質で高級なブランドを求める顧客は、価格に関係なく製品やサービスを欲しがります。ブランドは価格を顧客に伝えず、高品質であることや高級であることを、顧客とのコミュニケーションに用います。顧客が求めるものが、贅沢であったり名声であったりするからです。

4. 特定用途へのポジショニング

このポジショニング戦略では、製品やサービスが特定の状況で使われることを目指し、特定の状況に合わせて作られることになります。

カロリーメイトは多忙な人のためにいつでもどこでも栄養を摂取できるために、そして、フルグラは、朝の忙しいときに簡単に朝食を摂れる食品として、ポジショニング戦略をつくりあげています。

5. 文化的シンボルに基づくポジショニング

ブランドを競合他社と差別化するために、深く浸透した文化的シンボルを使用することがあります。競合他社が使っていない、顧客にとって意味のあるシンボルを特定し、そのシンボルとブランドとを関係づけます。

エア・インディアはマハラジャをマスコットとして使い、これは、クライアントに敬意を払って王室並みの待遇でもてなすことを示そうとするものであり、インドの伝統を強調しています。

エア・インディアのマハラジャとロゴ
エア・インディアのマハラジャとロゴ / by Air India

6. 競合他社とのポジショニング

このポジショニング戦略では、自社や自社製品が、競合他社よりいかに優れているかに焦点を当てます。他社との比較を明確に行うことで、他社より優れていることを主張します。

7. 顧客グループによるポジショニング

このポジショニング戦略では、特定の顧客グループをターゲットにして、提供する製品やサービスが、なぜそのグループに関連し、適用できるのかを説明します。特定の顧客グループとは、例えば、子供であったり、若い男性であったり、年金生活者であったりします。

ポジショニング戦略の作り方:5ステップ

ポジショニングを確立するためには、ターゲットとなる市場や顧客を理解しなければなりません。そのためには、市場や顧客の調査が必要となります。

1. 現在のブランドを評価する

ポジショニング戦略を構築するための最初のステップは、企業組織そのものと製品やサービスの両面において、自社ブランドを分析することです。また、競合他社との相対的な位置関係も評価します。その上で、調査分析の結果を総合的に判断して、どのようなポジショニングをとるかを決めていきます。

ターゲット顧客の特徴
製品やサービスに合致した理想的な顧客像であるバイヤーペルソナ(ペルソナ)を活用します。バイヤーペルソナには製品やサービスの適合性を左右する、所属や所得などの要素を含んでいますので、ターゲット顧客の特徴を明らかにすることができます。
顧客が解決しようとしている問題
製品やサービスを利用しようと検討する顧客はすべて、特定の問題に悩み、それを解決しようと望んでいます。その問題をどのように解決しようとするか、また、競合他社との違いは何か、検討していきます。
ターゲット市場
ターゲット市場の規模はどの程度か、自社の成長段階はどの位置にあるか、また、成長戦略はどのようになっているか、そして、どのような競合他社が存在するのかを調査し、検討していきます。

ブランドを評価するヒント

市場に自社のビジネスをどのように提示するかを決める上で、自社のミッションと価値観は重要な要素となります。例えば、パタゴニアのミッションステートメントは「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。」であり、地球環境に当事者意識を持った顧客の支持を集めています。

2. 競合他社を検証する

顧客の頭の中で自社と競合他社との相違を明確にすることも、ポジショニング戦略の役割のひとつです。そのためには、競合他社を十分に研究して、顧客が競合他社をどのように見ているか、心のなかでどのようにイメージしているか、強みや弱みなどを、理解する必要があります。

競合他社を検証するヒント

競合他社のポジショニングを調べることです。競合他社がどのように市場にアプローチしているかを理解すれば、自社を差別化させた独自のポジショニング戦略を見つけ出すことができます。

3. 独自性を明確にする

競合他社を調査した後は、自社を市場でどのように差別化するかを明確にします。そして、ポジショニング戦略を成功させるために重要なことは、自社のビジネスの個性や特徴を明確にすることです。そのためには、差別化要因を具体的に明らかにしていきます。

独自性を明確にするヒント

差別化や独自性は、顧客の問題をどのように解決するかという点から検討していかなければなりません。新築住宅の屋根の色が異なることは、顧客の問題を解決する差別化とはなりませんが、諸外先進国並みの快適な住環境を実現できるパッシブハウスとなると、家族のために最高の快適さを望む顧客にとって、非常に意味のある差別化・独自性となります。

4. ポジショニングステートメントを作る

ポジショニングステートメントは、これまでの3ステップで取り組んだ調査を、競合他社と比較しつつ、顧客にとって自社ブランドがどのような存在であるかを簡潔にまとめたものです。ポジショニング戦略の核となるポジショニングステートメントは、顧客へのマーケティング戦略を具体化し、社内をとりまとめる文書です。

典型的なフォーマットは、以下のようなものです。

[顧客の要望・助けを必要とする点]な[ターゲット顧客]に対して、「ブランドや製品やサービス」は[利点や価値]を提供します。[競合他社]とは異なり、[顧客が独自性を信じるべき理由]のため、[競合他社との相違・差別化]しています。

これを、テスラModel 3において、安全性を第一のポジショニングとして強調した場合、例えば以下のようになるでしょう。

安全を求めるお客様のために、テスラのModel 3は最高の安全性を提供します。一般的な他の自動車とは異なり、安全性はModel 3の最も重要な部分です。金属構造は、すべての部分が最大強度となるようアルミニウムとスチールが組み合わされ、ルーフのクラッシュテストにおいて、オールガラスルーフであっても大人のアフリカゾウ2頭に匹敵する重量にも耐え、安全性評価5つ星を獲得しているからです。

ポジショニングステートメント作成のヒント

ポジショニングステートメントは、そのまま社外のコミュニケーションに使うものではありません。ポジショニングステートメントは、ブランドにまつわるあらゆる企業活動やコンテンツを導く指針です。先にあげたテスラModel 3の安全性はWebサイトで紹介されていますが、実際のポジショニングステートメントに記載はされていません。

5. ポジショニングステートメントを検証する

ポジショニングステートメントを作成したら、そのポジショニングが機能しているかを検証するために、顧客にテストをしてフィードバックを集めなければなりません。そのためには、電子メールでアンケートを送るなど、顧客調査が有効となります。

ポジショニングが市場に導入され、顧客の頭の中で定着してしまうと、それを変更するのは非常に困難です。そのために、本格導入前にテストを行い、必要に応じて修正していくのがよいでしょう。

ポジショニングステートメント検証のヒント

CRMソフトウェアや電子メールマーケティングソフトウェアは、大抵は自動化ツールが備わっていますので、アンケートの自動配信などを行って、顧客とのコミュニケーションを効率化することができます。

ポジショニング戦略について最後に

ポジショニング戦略を構築して実行しても、思うような結果が出ないこともあり、製品やサービスのポジショニング戦略を変えなければならないこともあります。顧客の要望が変化したり、新しい競合他社が出現したり、技術が進歩したり変化するなどが原因で、あるいは、現在のポジショニング戦略がビジネスを大きくしていくには相応しくないことが判明したり、様々な原因で、ポジショニング戦略を変える必要も出てくるでしょう。

ビジネスの将来や顧客の変化に応じて、柔軟にポジショニング戦略を変えていくことで、顧客の心に強く残る場合もあるのです。

芦屋 十貴夫

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あしやときおと申します。Webプログラミング、Webデザイン、マーケティングを生業としています。