日本では海外先進国より起業家になりたい人は多くありませんが、それでも自分で事業を立ち上げたいとか、会社員ではなく自営業や個人事業主などフリーランスとして仕事をしたいという人は多くいます。
様々なアイディアを持っていて製品やサービスを作ったりする人もいれば、受託の制作や開発に取り組んでいる人もいます。彼ら彼女らは技術的に優秀であっても、ビジネスが失敗してしまうことも多くあります。
もちろん、ビジネスには失敗がつきものですが、常に失敗しているのは、マーケティング戦略をまったく考えておらず、マーケティング活動を行っていないせいでもあります。
マーケティングは、どのような業界であっても、どのような製品やサービスを作ったとしても、受託制作や開発に取り組んでいたとしても、成功の基盤となるものです。
ここでは有効なマーケティングチャネルとマーケティング戦略を紹介します。
- 電子メールマーケティング
- コンテンツマーケティング
- ソーシャルメディアマーケティング
- 有料検索
- オーガニック検索
- Webサイトマーケティング
- 口コミマーケティング
- SMSマーケティング
その前に、まずは、マーケティングとは何かを確認しましょう。
マーケティングとは何か
マーケティングの原則4Pは解釈を変えたり拡張されて今も生きています。ただし、20世紀初頭のマーケティングと、デジタル全盛の現在のマーケティングとは異なります。
マーケティングとは、ブランド認知度を高め、ブランドと顧客との関係性を構築し、顧客にブランドを広めてもらうための一連の取り組みです。
マーケティングの基本
顧客獲得のためにマーケティングキャンペーンを行いたい場合、マーケティングの基本を押さえる必要があります。
顧客は常に正しい
「顧客は常に正しい」と言っても「お客様は神様」という意味ではありません。
マーケティングの原則の基盤となるのが、顧客志向ですので、商品やサービスを売る側が何を好むか、どのチャネルを好むか、どういうコンテンツが好きか、ということではなく、顧客が何を好み、どのチャネルを好み、どういったコンテンツを好むかを知ることが大事なのです。
「電子メールは時代遅れで誰も使わない」とあなたが思っても、ターゲット顧客がそう思うとは限りません。YouTubeが流行っているからといっても、ターゲット顧客はYouTubeをほとんど利用していないかもしれません。
時間をかけて調査し、顧客を知り、学んだことをもとにバイヤーペルソナを作り、マーケティング目標を定めます。
チャネルをつなぐ
小規模なビジネスのマーケティング計画は、ダイレクトマーケティングからデジタルマーケティングまで、様々なチャネルから構成されます。そして、これらのチャネルがすべて統一されて互いに関連し合っていることを確認しなければなりません(これは、オムニチャネルマーケティングと呼ばれます)。
例えば、ある顧客がTwitterであなたをフォローし、Twitterで投稿しているブログ記事のリンクをクリックしたとします。その記事を気に入った顧客は、ニュースレター(メルマガ)に登録し、ニュースレターから製品へのリンクをクリックして購入します。
ということは、ソーシャルメディアマーケティング、コンテンツマーケティング、電子メールマーケティングが関連し合って販売に繋がったことになります。
行動可能にする
顧客に行動を起こさせることが、マーケティングキャンペーンの目的です。「行動」とは、リンクをクリックする、ニュースレターを購読する、電子書籍をダウンロードする、ソーシャルメディアでシェアするなどです。こういった最終目的がなければ、マーケティングキャンペーンをする意味がありません。
顧客を最終目的に導きたいのであれば、行動することへの呼びかけが必要です。いつ誰に何を何故どのようにしてもらいたいのかを明確にする必要があります。
測定する
これぞという電子メールキャンペーンができたとしても、それが顧客の心をつかむとは限りません。キャンペーンごとに目標を設定し、その指標を追跡することが重要です。
しばらくキャンペーンを行ううちに、何がうまくいって、何がうまくいかないのかがわかるようになり、データに基づいてキャンペーンを改善できるようになります。試行錯誤を恐れずに色々と試し、その結果を追跡するようにしていきます。
自営業者、個人事業主、フリーランス、中小企業の小規模ビジネスに適したマーケティングチャネルとマーケティング戦略
マーケティングの世界では、次々と生まれるマーケティング用語やバズワードに溢れ、その中からビジネスに適したマーケティング戦略を選ぶのは骨が折れます。
ここでは、その骨折りをショートカットできるよう、厳選した重要なマーケティング戦略とそのヒントを紹介します。
以下のチャネルのほとんどがインバウンドマーケティングで、顧客に深く関連する有益なコンテンツを作成することで、顧客をあなたのビジネスに引き寄せるマーケティング手法です。顧客に助けの手を差し伸べることで、自社の製品やサービスに興味を持ってもらうわけです。
1. 電子メールマーケティング
電子メールは昔からあるチャネルですが、まだまだ現役で使われていますし、電子メールなしで成り立つビジネスは、そうそうありません。そして、DMAのレポートによると、マーケティング担当者が最も評価し重要としているチャネルが、電子メールです。
あらゆるチャネルの中で最も強力な電子メールは、上記レポートにもあるように、主に、販売、顧客エンゲージメントの構築、ブランド認知度の向上、顧客ロイヤルティの構築といった目的に使われます。
従って、顧客との関係を深めていくために、顧客にとって興味をそそる、有益なコンテンツを、また、販売のために行動を促すコンテンツを提供していくことで、効果的なチャネルとして大いに活用できます。
コンテンツの一例ですが、
- 情報量の多いブログや動画
- 特別割引、限定販売、クーポン
- 新製品の案内
- 季節ごとのプロモーション
などを、セグメント分けした電子メールリストに送ります。
電子メールキャンペーンを構築するときには、考慮しなければならないことが様々あり、長い時間がかかるかもしれません。この際、手作業を自動化できるMailChimp、Benchmarkemail、ActiveCampaign、MailerLite、AWeberなどの電子メールマーケティングソフトウェアが役立ちます。
日本の電子メールマーケティングソフトウェア(電子メール配信システム)もありますが、例によってガラパゴス化していて、マーケティングソフトウェア間での連携がしにくく、マーケティングテクノロジースタックを組みにくいので、避けるのが無難です。
2. コンテンツマーケティング
「自社ホームページ」を作って終わりという事業者が多い中、コンテンツマーケティングを利用している場合もありますが、必ずしも成功している中小・零細企業、自営業者・個人事業主・フリーランスは少ないのが現状です。
顧客に対して何も提供しない盗用したようなコンテンツは、集客にも販売にも顧客維持にもまったく役立ちませんので、コンテンツは考え抜かれた独自の視点を持ったものでなければなりません。このようなコンテンツは、ブランドを認知させ、ブランドのファンを生み出します。
量よりも質を重視し、じっくりと時間をかけてコンテンツ作成に取り組みます。毎日のつまらない投稿よりも、自分が納得できる情報量の多いコンテンツを、2週に1つ投稿するほうが効果的です。
その際、ターゲットオーディエンスに何を提供できるのかを正確に把握し、それをコンテンツの基盤とします。
3. ソーシャルメディアマーケティング
ソーシャルメディア(SNS)マーケティングは、顧客との距離が近いので、気軽で個人的なアプローチを取ることができます。ただし、ターゲットは絞り込まなければなりません。
すべてのコンテンツをすべてのチャネルに投稿するのは避け、理想的な顧客が使っているチャネルだけをターゲットとし、そのチャネルで効果的な形態にコンテンツを調整します。何が効果的なのかは必ずテストをします。
ソーシャルメディアの投稿などからのWebサイトへの訪問は追跡し、最終的にコンバージョンに至っているかを確認します。そうすることで、ソーシャルメディアキャンペーンが他のチャネルと比較してどのような成果を発揮しているかを知ることができます。
4. 有料検索
Google検索で何かを検索すると、検索結果ページ(SERP)の上部や下部に、有料検索の結果が表示されます。先頭に小さく「広告」と表示されているものが、有料検索の結果です。
これは、特定のキーワードで検索されたときに、広告主がGoogleに料金を支払って掲載している広告です。この広告以外は、オーガニック検索結果です。
有料検索のマーケティングは、検索エンジンマーケティング(SEM)とも言われますが、検索結果ページの上位に表示されるために、入札によって表示位置を確保し、結果をクリックした場合に料金を支払う仕組みとなります。
有料検索が効果的であるのは、特定のキーワードで検索した顧客にのみ広告が表示されるので、適切なキーワードを選択したとすると、ターゲットの顧客にクリックされる可能性が高まり、このクリックから得られるトラフィックが、ビジネスと極めて関連性の高いものになるからです。
有料検索を効果的に運用するには、適切なキーワードを選ぶことが重要です。一般的すぎず、かといって、ニッチすぎるキーワードでは駄目です。また、目を引きクリックしてもらえるコピーライティングも重要です。
5. オーガニック検索
ブランドや、製品・サービスを顧客に見つけてもらうための最も基本的なマーケティング戦略は、Google検索でオーガニック検索結果に表示されるように、Webサイトを最適化することです。
オーガニック検索結果は、顧客が検索エンジンで検索したキーワードに基づいて検索結果ページに表示される、有料検索を除く検索結果のことです。この検索結果にリストアップされるためには、検索エンジン最適化(SEO)が必要となります。
検索エンジン最適化(SEO)によって検索結果の上位にランキングされるのは時間がかかりますので、戦略を練って根気よく対策をしていく必要があります。
- バイヤーペルソナが検索するターゲットキーワードを調査しなければなりません。
- そして、そのキーワードを元にコンテンツを作成する必要があります。
- そして、そのキーワードで検索した時に、Webページがターゲットオーディエンスに正常に表示されるよう、対策していきます。
6. Webサイトマーケティング
Webサイトが作りっぱなしで何年も放置されていないでしょうか。
- ブランディングに合わせた最近のデザインと機能を実装しているか
- どのようなデバイスで閲覧してもデバイスに応じて快適に利用できるか
- 最新情報の更新がされているか
- 検索エンジン最適化(SEO)対策をしているか
- 表示速度が速いか
これらの対応をしているでしょうか。
ショッピングカートがあっても、正常に機能しているでしょうか。
Webサイトは顧客とブランドの最初の接点となりますので、顧客がクライアントになるのを妨げていないか、常に気を配ってメンテナンスをする必要があります。
Googleアナリティクスなどの解析ソフトウェアや、電子メールマーケティングソフトウェアなどを利用し、それぞれのWebページのコンバージョンを見ることで、Webサイトのマーケティング戦略がどれだけ成功しているかを追跡できます。また、ヒートマップを確認し、問題のある部分を特定することもできます。
7. 口コミマーケティング
何かを買い求めるとき、家族や友人、知人、その業界をよく知っている人に、アドバイスを求めることがよくあります。
また、MyELの調査によると、商品やサービスを購入する時に、インターネットの口コミを参考にする人は、全体の6割弱に達しています。
ですので、ブランドや商品やサービスを口コミで推薦してもらうことは、マーケティング計画の重要な一端となります。
顧客にブランドメッセージを共有してもらいたいのであれば、競合他社を凌ぐ、優れた製品やサービスを提供し、ターゲット市場で際立つようにしなければなりません。顧客がブランドを信頼できると感じてもらうために、顧客のことを気にかけている姿勢を十分とっているかを、確認する必要があります。
電子メールマーケティングソフトウェアには、顧客の行動をトリガーとして電子メールを自動送信する機能があります。製品を購入したり、友人に推薦したり、ソーシャルメディアで共有したりする顧客の行動に応じて、インセンティブを付与したりすることができるわけです。こういった機能を活用して口コミを増幅させ、ブランド認知度や評価を向上させていくことができます。
8. SMSマーケティング
MMD研究所の調査によると、スマートフォンの利用時間は、1日2~3時間が19.2%、3~4時間が16.6%で、多くの人が1日の相当の時間をスマートフォンに費やしています。そして、メールやメッセージの1日の送信数は、キャリアメール、SMS、LINE合わせて16.5通と、まさにスマホ中毒と言ってもよいほど利用しています。
日々の時間管理をしていくためには、よくない調査結果ですが、SMSマーケティング戦略を活用し、顧客にリーチしたいマーケティング担当者にとっては、よい統計です。
SMSマーケティングは、地理的・時間的に限られたキャンペーンには特に有効です。電子メールで1週間後の棚卸・在庫処分セールの告知をしても、顧客はその電子メールを見ないかもしれませんし、見ても忘れてしまうかもしれません。しかし、SMSであれば、読まれる可能性は高くなります。
登録フォームなどに電話番号のフィールドを追加し、顧客情報を収集することができます。もちろん、SMSの送信にはオプトイン、すなわち、顧客の事前の同意が必要です。
SMSキャンペーンも、電子メールマーケティングと同様に、ソフトウェアで顧客をセグメント化したり、メッセージを送信するタイミングをコントロールできます。
ビジネスに合った戦略を
どのマーケティング戦略を実行して、どのマーケティングチャネルを採用して、どのようなコンテンツを発信していくか、そして、どのくらいの資金を投じるかは、ビジネスによってターゲット顧客も様々ですし、顧客の要望も様々ですので、何とも言えません。
重要な点は、マーケティング活動などで得たデータによってマーケティング活動を改善していくことです。そして、マーケティング戦略を実行して成果が出るまでには、相当の時間がかかります。
テストをし、データを取り、データに基づいて最適化する。これを繰り返していくことで、多くの見識を得ることができ、ビジネスを成功に導くにはどうすればよいかが、次第に明確になってきます。