集客に力を入れて多くのリードを集めても、製品やサービスを購入してもらわなければ意味がありません。実際、多くのリードは購入せずに去ってしまいます。
マーケティング活動の価値を最大化するためには、リードナーチャリングが不可欠です。獲得したリードを管理し、質の高い顧客にするためにはどうすればよいでしょうか。
まずは、リードジェネレーションで獲得したリードが終わりでなく始まりであることを認識すべきです。リードはまだブランドや製品のことをほとんど知りません。リードを顧客にするには、リードに対する十分なケアが必要です。
リードナーチャリングは、リードとの関係を維持し、購入に向けた販売パイプラインにリードを送り込むために不可欠の戦略です。
ここでは、リードナーチャリングとは何か、そしてリードをどのようにしてセールスファネルに移動させ、質の高い顧客を生み出すことができるのかを説明します。
リードナーチャリングとは?
リードとは、顧客になる可能性のある潜在顧客のことです。そして、リードナーチャリングとは、そのまま日本語に訳すと「リードの育成」となりますが、「育成」と言っても、教え従わせ導くのではなく、問題を明確に認識してもらい、その解決を支援し、繋がりを育むということです。
リードナーチャリングとは、リードの苦痛を和らげたり解消するために、苦痛がもたらされる原因を特定し、その原因を取り除くために尽力することを通じて、リードとの距離を縮め、製品やサービスの購入に近づいてもらう一連の手順です。
そのために、販売パイプラインにいるリードに対して戦略的なマーケティングを展開し、パーソナライズしたメッセージやマーケティング資産を最適なタイミングで提供していきます。
当然ですが、製品やサービスがリードの苦痛を解消する決定的な解決策を提示していなければ、ナーチャリングによって高まった期待が外れることになり、事業の継続は厳しいものとなります。
また、十分に購入準備ができていないリードに対し、むやみに販売戦術を適用すると、そのリードを失うこともあります。
リスト全体への働きかけを最適化することは、大規模なリード管理戦略に不可欠な要素です。リードを育成することで、リードの質を高めることができ、リードについてより深く知ることができます。リードについて知れば知るほど、リードのスコアリングが可能になり、購入に近いリードを評価し、優先順位をつけることができます。
リードナーチャリングは、新たに適格リードを生み出して顧客にするための、リードジェネレーションから始まる戦略の最終段階です。
なぜ中小企業やフリーランスにとってリードナーチャリングが重要なのか?
リードナーチャリングは、リードジェネレーションからコンバージョンに至る戦略の価値を最大化するためには必須です。
特に、資金や人員に限りのある中小企業やフリーランスは、組織全体の効率を最大化する必要があり、リードを適格リードから見込み客に、見込み客を顧客にし、売上につなげることが重要となります。
リードはEメールやSNSなど、オンラインで日々大量のメッセージを受け取っています。パーソナライズされていないメッセージや、無関係なコンテンツを嫌い、受け入れません。
また、リードには多くの選択肢があり、購入を検討するにあたって、オンラインで調査を行う場合も多くなります。ニュースレターに登録してくれたリードも、いずれEメールを読まなくなり、ブランドも商品も忘れられてしまいます。
そのリードにブランドを思い出させ、引き留めておかなければ、購入にまで至る可能性が少なくなります。
リードナーチャリングを成功させる5つの戦略
リードナーチャリングの決定的な方法はありません。業界や、販売している製品や提供しているサービス、さらに、マーケティングキャンペーンにかけるリソースや実力などによって、異なってきます。
ですが、自社や自分に合わせて採り入れることのできる、ナーチャリングキャンペーンを成功に導く戦略はいくつかあります。ここでは、そのうちの5つを採り上げます。
1. リードのセグメント化と優先順位付け
リード管理をスムーズに進めるためには、リードをセグメント化(セグメンテーション、分類)し、どのリードを優先して対応するかの優先順位付けが必要です。
まずは購入見込みのないリードと、販売パイプラインに入れるべき購入見込みのありそうなリードを分けなければなりません。
購入意思を示しているリードを特定することで、購入を促すためのメッセージを優先的に提供することができ、効果的に購入に導くことができます。
2. リードスコアリングツールの導入
リードに優先順位をつけるには、リードスコアリングツールを使うのが一番です。
もちろんリードが指折り数えられる程度に少ないのであれば、GoogleスプレッドシートやExcelなどで管理できますが、そういった場合は多くはないでしょう。例えば、リードから顧客にまで至るコンバージョン率が1%の場合、月10件のリードであれば、10ヶ月に1件の顧客にしかなりません。
リードスコアリングの機能は、CRMソフトウェアやマーケティングオートメーションソフトウェアによく搭載されています。
リードスコアリングツールは、セールスファネルのそれぞれの位置にいるリードに、購入の可能性に応じたスコアを自動的に付与します。このツールは、Webサイトやマーケティング活動におけるリードのエンゲージメントや行動を追跡して、スコアを生成します。
ニュースレターEメールを開封したり(ただし、近年のApple社の対応により、Eメールの開封判定は無効となりそうですが)、Eメールのリンクをクリックするとスコアを加えたり、商品価格のページを何度か閲覧するとスコアを大きく加えたり、大抵のソフトウェアでは自在に設定を変更できますが、スコアが予め設定しておいたしきい値を超えると、マーケティング適格や販売適格のリードとなります。
リードスコアリングを導入すると、スコアが低いリードに無駄なメッセージを送信せずに済みますし、逆にスコアの高いリードには、スコアに応じた効果的なメッセージを送ることができます。
また、リードスコアは、様々なコンテンツの成果を数値で把握でき、それぞれのマーケティング戦術を改善するのにも役立ちます。
3. 複数のターゲットに合わせた、それぞれのコンテンツ・セットを用意する
購入者側に立った購入までのバイヤーズジャーニーは、一般的に、「認知(Awareness)」「検討(Consideration)」「決定(Decision)」、もう少し細かく区分しますと「認知(Awareness)」「興味(Interest)」「検討(Consideration)」「評価(Evaluation)」「決定(Decision)」「購入(Purchase)」と進みますので、それぞれに合わせたコンテンツの作成が必要となります。
一方、販売者側に立ったリードの段階は、事業内容によって変わりますが、およそ、「リード」「マーケティング適格リード」「販売適格リード」「販売機会」「顧客」と進みます。
「認知」段階にいるリードには「検討」段階に進ませるようなコンテンツ、そして、「検討」から「決定」に進ませるコンテンツが必要となります。「認知」段階のリードに「決定」段階のコンテンツを提供することは避けなければなりません。
必要なのは、バイヤーズジャーニーに沿ったコンテンツだけではなく、それぞれのセグメントのニーズに応じたコンテンツも必要です。例えば、社内のポジション、社長なのか、現場のマネージャーなのかなどによって、求めるものや解決したい問題は異なります。
リードのスコアはリードごとに随時変わっていき、大きく増えたり減ったりすることがよくあります。その度ごとに提供するコンテンツを自動的に配信し、リードが離脱するのを引き留め、関係を維持していきます。
4. チャネルを超えてナーチャリングコンテンツに関与する
リードナーチャリング戦略はEメールで行われることが多いのですが、現在では様々なチャネルがあり、ターゲットとする潜在顧客が利用するチャネルに合わせて選定しますが、複数のチャネルを組み合わせて使うのが効果的な場合もあります。
フリーランスや一人社長の場合は、1人で様々な業務を行い、それぞれにかけられる時間が限られているため、ソーシャルメディアやWebサイトのコンテンツ、Eメールのドリップキャンペーン(日本語ではステップメール)など、複数チャネルをマーケティングオートメーションツールで管理するのが基本です。
ナーチャリングキャンペーンを成功させ、売上を確保して伸ばしていくには、自動できる業務を積極的に自動化していかなければなりません。リードスコアリングやコンテンツの管理、セグメンテーションやパーソナライゼーションなどを、手動で行うのは厳しいはずです。
5. プロセスと役割とを定義する
複数人でリードを管理している場合は、プロセスの定義とそれに沿った役割分担が重要になります。
リードを見込み客とするのはどういった場合か、マーケティング適格リードや営業担当に引き継ぐ販売適格リードとするタイミングはいつか、担当するのは誰か、どのチームか、などです。
規模の小さい企業はマーケティングプロセスや販売プロセスを、フリクション(摩擦、対立、反発、離反、敵意)の兆しを捉えられる範囲で、できるだけ単純化すべきですが、それでもある程度は段階を踏む必要があります。
人の心はそれぞれ異なります。声の調子、目線、仕草などで、ある程度は心の状態を読むことはできるでしょう。しかし、リード一人ひとりを仔細に観察するのは非現実的ですし、観察からの判断は主観的となります。そのため、リードの状況は行動のみで判断し、その行動に応じた客観的に判断できるスコアを付けるのです。
そして、リードスコアが10点で満点であれば、例えば9点になった時点で、機械的に、自動的に、リードが営業に送られるようにします。
リードを営業担当に送る際には、マーケティング担当は、そのリードについての、商談を成立させるための計画を練ることのできる、プロファイルを含めたあらゆる情報を共有しなければなりません。その情報も、機械的に自動的に共有されるようにします。
リードナーチャリングはリード獲得から販売までの懸け橋
リード獲得後、購入に至らしめるには、最適なリードに最適なタイミングで最適なメッセージを送らなければなりません。そうすることで、リード獲得から購入へのコンバージョン率が確保され、売上も向上していきます。
リードナーチャリングの成果を判定し、改善していくには、リードから見込み客への変換率、見込み客からオポチュニティへの変換率、オポチュニティから顧客への変換率など、計測データが必要になります。
これらの比率だけではなく、変換するまでの時間も重要です。データから、販売サイクルが長くかかりすぎているポイントも見つかることがあるでしょう。
ここではリードナーチャリングについての概要に留め置きましたが、リードは、ブランドや製品・サービスに気づいてから購入するまでの道程で終わりません。購入後もブランドや製品・サービスに関わり続けます。それ故、販売者側もセールスファネルで終わらせてはいけないということに、ご留意ください。