リードジェネレーションファネル

リードジェネレーションファネルで売上を増やす方法

Webサイトを訪れた人がすべて見込み客になるとは限りません。情報を集めているだけの人や、調査に訪れた競合他社、自分で問題を解決しようとしている人など、購入に至る可能性の殆どない訪問者が多くいます。

このような人を排除するのに、リードジェネレーションファネルは有効です。

Webサイトへの訪問者を製品の購入に導く、コンバージョン率の高いリードジェネレーションファネルを構築することで、販売パイプラインを満たし、販売プロセスを改善することができます。

リードジェネレーションファネルとは?

リードジェネレーションファネルは、自社Webサイトにトラフィックを誘導し、リードに変え、コンバージョンに導いて売上を増やすために用いるツールです。

リードジェネレーションファネルは、顧客獲得(カスタマーアクイジション)ファネル、セールスファネルなどとも呼ばれます。

業種や戦略などによって用いるファネルは異なりますが、一般的なファネルはおよそ以下のようになります。

セールスファネルとカスタマーエクスペリエンス
企業視点でのリードジェネレーションファネル

ファネルの最初には大きな網があり、WebサイトやSNSを訪れた人を捕らえます。最初の目標は訪問者をリードに変えることで、リードスコアによってファネルのどの段階にいるかを判定します。

このプロセスを容易にするために、リードジェネレーションソフトウェアや顧客関係管理(CRM)ツールを使ってリードを追跡することが一般的です。

ただし、こういったソフトウェアは部署間・各段階での情報共有がしにくい場合が多く、マーケティングチームとセールスチーム、セールスチームとカスタマーサクセスチームとの間で齟齬を発生しやすいので、注意が必要です。

リードジェネレーションファネルの4段階

ファネルには、複数の段階があります。マーケティングから販売までのプロセスだけを重視する企業もあれば、カスタマーライフサイクルを重視して、上記図に含まれない販売後のカスタマーサクセスをも含める企業もあります。

1. 認知

最初の認知段階では、様々な人がブランドに触れます。その人たちは、会社や製品・サービスについてほとんど知識がありません。自分が解決すべき問題を抱えていることにすら気づいていないこともあります。

ここでは、ブランドが彼らの問題を解消できると気づかせるのが目的ですので、Webサイトやブログで有用な記事を発信したり、ソーシャルメディアキャンペーンなどで注目を集めていきます。

注意すべきは、製品やサービスにマッチした理想的な顧客像(ICP)を作成しておくことです。これによって、その後のマーケティング戦略がスムーズに進みやすくなります。

2. 興味・検討

人々が自分の問題やブランドを認知したら、より興味をもってもらうように働きかけます。何らかの価値、例えば電子書籍やホワイトペーパーなどを、メールアドレスと引き換えに提供するなどして、リスト(顧客リスト)を作成します。

リードの購入準備が整う前に、大量のメールを送信するのは、逆効果です。また、メールを見る優先度は低いので、開かれず放置されることも多くあります。

送信間隔、タイミング、内容は、リードをセグメント化してパーソナライズする必要がありますが、購入前の段階では行動データが取れませんので、リードスコアリングは主観的な判断基準に頼ることになり、パーソナライズは不完全となる傾向にあります。そのため、ファネルの各段階を順調に通過して成約に至るのは、ごく少数です。

注:この文脈で用いる「ナーチャリング」という用語は、ある考えや行動を支援したり助けたりする、人に対する愛情を含む意味で用います。しかし、人の認知をコントロールして行動を変えさせる自称「メンタリスト」が有難がられる倫理の壊れた社会では、「人々や見込み客を『教育』して行動を起こさせる(商品を購入させる)」という考えで仕事をしているマーケターや営業担当が数多く存在してしまいます。彼らは、企業視点のモデルに基づいて考えますので、常に企業(自分)目線となり、いくら「顧客目線で」と言おうが、小手先の認知操作に頼ることになります。

この段階では、MQL(マーケティング適格リード)をリードスコアリングに基づいて決めていきます。

3. 決定

自分が抱えている問題とその解決策を認識し、問題解決の優先度・緊急度が高い場合に、人は積極的に答えを探し求めます。探し始めには様々な選択肢を机に広げて比較しますが、Webサイトやその他リソースなどで解決の道筋が立つ場合は、ブランドが信頼され、製品やサービスを購入してもらいやすくなります。

この段階でも、パーソナライズしたメッセージの配信が重要で、内容、タイミングが適切でないメッセージは、ファネルの次の段階に進むのを妨げます。

4. 行動

ここに至り、SQL(販売適格リード)となったリードが、今まさに製品やサービスを購入する段階となりました。

ここで営業チームの登場となり、行動への後押しを行いますが、営業活動をせず、SQLもしくはMQLとSQLの両方をすっ飛ばすファネルも可能です。

近年ではセルフサービスを望み、営業担当のセールスを嫌う顧客が増えていますので、簡単に導入できるけれども割合高額な製品やサービスは、一般的な販売サイクルとは異なり、セルフサービスと販売活動との組み合わせを、あるいは、導入が簡単で高額ではない商品の場合は、販売活動の廃止をも検討すべきでしょう。

B2Bバイヤーのうち、[中略]担当者と直接やりとりしたいと考えているのは20~30%に過ぎない。

Survey: US B2B decision-maker response to COVID-19 crisis(McKinsey)

B2Bバイヤーの99%が、エンド・ツー・エンドのデジタルセルフサービスモデルで購入すると回答し、大多数が5万ドル以上をオンラインで購入することに非常に満足している。

同上

5. フォローアップ

以上でリードジェネレーションファネルの4段階は終わり、リードは顧客になりましたが、1つ、購入後のフォローアップを追加しておきます。

製品・サービス内容によりますが、通常ここはカスタマーサクセスチームの担当になり、セットアップや、ワークショップなどのトレーニングによって、顧客が製品やサービスを使って問題解決するのを援助していきます。

そして顧客はアクティブカスタマーとなり、アップセルやリピート購入などを通じて、ロイヤルカスタマーとなります。

独自のリードジェネレーションファネルを作成し、使用する方法

ファネル、リードスコアリング、マーケティングの自動化は、ターゲット顧客、そしてその人々が活動する市場の中での行動に基づいて設計していきます。

ここでは、理想的な顧客像・カスタマープロファイル、ブランドストーリー、戦略的メッセージングなどについては、作成済みの前提で先に進めます。

1. タッチポイントのリストアップ

販売戦略を立てる前に、ターゲット顧客(理想的な顧客像に基づく顧客)がどのようにしてブランドに出会うのか(タッチするのか)を把握する必要があります。カスタマージャーニーの全体像を把握するためには、マーケティング、営業、カスタマーサクセスの各チームの連携が必要です。

例えば、以下のようなタッチポイントがあります。

ペイドメディア
ペイパークリック(PPC)広告、ソーシャルメディア広告、店頭ディスプレイ、ラジオ・テレビ広告などの有料広告。
オウンドメディア
Webサイト、ブログ、ランディングページ、ソーシャルメディアのページや投稿、電子メール、ダイレクトメール、SMSなど。
アーンドメディア
レビュー、第三者の記事での言及、口コミ、紹介など。

2. カスタマージャーニー

次に、人々がどのようにタッチポイントを通過するのかを確認します。カスタマージャーニーマップは、カスタマーライフサイクルをベースにして、タッチポイントを加えていったものが基本となります。

タッチポイントを追加したカスタマージャーニー
タッチポイントを追加したリードジェネレーションファネル

カスタマーライフサイクルの各段階・各タッチポイントで、顧客が何を感じ、何を考え、何を望んでいるかを確認していきますが、製品やサービスを体験する前には、有効なデータが取りにくいので、顧客からのフィードバックを得るために、アンケートやインタビューが必要になります。

※注:実際のところ、カスタマーライフサイクルは企業目線での販売主導に即したものよりも、購入後も含めたサイクルのほうが理にかなっています。つまり、獲得→導入→維持→拡充というサイクルです(「獲得」が上記図の「認知」「興味・検討」「決定」「行動」を含みます)。というのも、顧客にとっては、商品購入前よりも、苦痛を和らげ解消してくれる購入後のほうが重要だからです。ただし、ここでは説明の都合上、購入前の流れに沿って進めていきます。

顧客からのフィードバックを共感マップに整理すると、顧客の理解が深まります。

共感マップ
Empathy Mapping: The First Step in Design Thinking

3. コンテンツ作成

理想的な顧客像(ICP)に当てはまる人が、どんな問題を抱えていて、その問題がどのような苦痛を生じさせているかを考慮して、問題を解消し、苦痛を和らげあるいは無くすためのコンテンツを作成します。

プラットフォーム
ターゲット顧客がよく利用するチャネルに絞って、プラットフォームに合わせたコンテンツを配信します。複数のプラットフォームを利用する場合にも、顧客へのメッセージは、ブレないように一貫性を保つようにします。
形式
ブログやWebサイトの記事は認知度を高め、電子書籍や活用事例は検討段階に有効でしょう。動画、インフォグラフィックなど、様々なコンテンツの組み合わせを検討します。
リードの要望
コンテンツがリードに適したものであるか、問題を解決する内容となっているか、そして、そのコンテンツをターゲット顧客が見つけることができるか、キャンペーンのパフォーマンスを検証し、調整していきます。

4. Webサイトのトラフィックを増やす

最も簡単なのは、広告を出稿することです。ただし、顧客獲得コスト(CAC)には十分注意を払わなければなりません。その他は、ソーシャルメディアへのコンスタントな投稿、検索エンジン最適化(SEO)、デジタル資産へのCTA追加、カスタマーレビュー戦略の取り組みなどです。

5. リードの管理

リードジェネレーションファネルでは、リードの管理や絞り込みが重要になります。スムーズにリードから各認定リード、顧客へと流すには、CRMなどのツールを使う必要が出てきます。製品やサービスに応じてリードスコアを設計実装し、コンバージョン率を高く保つように工夫しなければなりません。

ファネルの構築

購入後を含むすべての段階で顧客をフォローすることで、アップセルや紹介を増やし、リードジェネレーションファネルを継続的に運用していくことができます。ターゲット市場・ターゲット顧客が求めるものを提供し、それを簡単に見つけられるようにした上で、何らかのツールを使って獲得したリードの質を高め、コンバージョンにつなげていきます。

リードジェネレーションファネルの欠点

マーケティングチームと営業チームは、購入を最終目的としがちで、特に販売実績でインセンティブが生じるのであれば、なおさら過激なセールストーク、セールスレターに頼り、購入させることを最重要課題にします。そのため、顧客の期待は購入時に最高潮に達し、購入することに大きな満足を感じてしまいます。そして購入後には、販売している製品やサービスがどんなに優れていたとしても、試用していない場合は特に、購入時の満足感を上回ることがありません。

この問題の根本的な理由は、リードジェネレーションファネル(セールスファネル)で販売事業を完結させていることです。従って、ファネルは、カスタマーエクスペリエンス(企業やブランド、製品やサービスに対する顧客の認識)に基づき、購入後の顧客の行動に拡張すべきです。さらには、購入後のファネルの各段階に事業の重点を移す必要があるでしょう。

芦屋 ときお

芦屋 ときお 記事一覧

ソフトウェアエンジニア(フルスタック、主にWeb系)。HTML, CSS, JavaScript, TypeScript, PHP, Python, Go, Vue.js, Express, Node.js, Nuxt, Next.js, Laravelなど。C#, ActionScriptも。デザイン、デジタルマーケティング。