新型コロナの影響で在宅勤務が増えています。いっそのこと独立してもいいんじゃないかと思っている人もいるでしょう。本業の給料が上がらず、あるいは減給となって、副業を考えたり、会社をやめてフリーランスになることを考えている人もいるでしょう。また、ビジネスのアイディアがあって、事業を立ち上げようと目論んでいる人もいるかもしれません。
しかし、会社を辞めてひとりで稼いでいけるかどうか心配になり、自分で自分のために働くこと、自営業者となることに、一歩踏み出せない人も多いのではないでしょうか。
今はデジタル技術が発達し、インターネットが普及して、パソコンとインターネットで生計を立てることができるので、自営業への道に飛び込むのは、それほど困難なことではありません。
ただし、何も知らずに自営への道に飛び込むよりも、自営業・個人事業主・フリーランスとして仕事をすることのメリットやデメリットを知っておいたほうがよいでしょう。そうすると、独立する心配も減らすことができ、人生を一歩先に進めることができるはずです。
自分で仕事をするメリット
会社組織に所属せず、自分で仕事をすることのメリットは、想像したことのある人はピンとくるでしょう、いくつかは簡単に思いつきます。
自由
起業するかどうか、自分で自分の仕事を始めるかどうかは、自分で自由に決められます。自分のビジネスを自分で好きなように行える自由があります。野心や情熱を追求する自由もあります。
組織が決めた業務をする必要はありません。業務内容をすべて自分で決める自由があります。出世のために上司に取り入る必要もありません。自分の成長を自分で決められる自由があります。
自分で行っているビジネスは自分のものなので、ビジネスの成果はすべて自分で独り占めにできます。ビジネスの成果をすべて自分が受け取れる自由があります。
会社に勤めているときのように、毎日9時から17時まで仕事をしなければならないと決まってはいません。仕事時間を自分で自由に決められます。もちろん、休日も自由に決められます。
子供が病気になったときには、仕事を休んでも上司に嫌な顔をされることがありません。会社の目を気にせず、家族を優先できる自由があります。
収入
仕事を始めてしばらくの間は、収益がマイナスになることもあります。しかし実際には、時間とともに収入が増え、今までの仕事で稼ぐ収入を超えるようになります。
というのも、ビジネスを制限するものは、自分自身以外に何もないからです。ビジネスを成長させ続ける限り、いくらでも収入を上げられる可能性があります。収益はすべて自分のものです。自分が取り組んだプロジェクトが成功したにもかかわらず、昇給しなかったり、ボーナスを支給されない、ということは決してありません。
意思決定
最終的な意思決定をするのは、自分自身です。自分のビジネスアイディアを上司に説明する必要もないですし、上司を説得するために長い時間をかけて準備する必要はありません。アイディアを試したければ、すぐに試すことができます。
これは自分でビジネスをすることの大きな魅力です。事業の方針をすべて自分で決めることができ、どのような社風にするのか、どのようなブランドにするのか、自分ですべて決められますし、自分の価値観をそのまま反映させることができます。
自分で仕事をすると決めたとき、注意しなければならないこと
自分で自分のためだけに働くと決めたとき、起業のメリットだけに目を奪われて、その難点が見えないことがよくあります。自分で仕事をすれば、必ずバラ色の未来が訪れるわけではありません。
だからこそ、雇われて働くことを、多くの人が選ぶのです。自分で自分のために働くことを決める前に、デメリットについても見てみます。
モチベーション
ひとりで仕事をしたい理由は何でしょうか。会社に不満があるからでしょうか。それとも、裕福になりたいからでしょうか。このような怒りや欲望が原動力では、ビジネスは長続きしません。怒りや欲望は、ネガティブなエネルギーです。ネガティブなエネルギーは、すぐに尽きます。
これからやろうとする仕事や、作り上げていきたいビジネスに、情熱を持っていなければなりません。でなければ、顧客に素晴らしい体験を提供するモチベーションは得られません。このモチベーションがなければ、顧客との関係を構築し、顧客を増やし、収益を増やしていくことができません。
不確実性
誰かに雇われて仕事をしているときは、定期的に決まった額の収入がありますが、自営業となるとそうはいきません。仕事を始めたばかりのときは特に、収入が不安定です。次の月に確実に収入が得られるとは限りません。
そして、世界や国や業界の経済状況が悪くなれば、その影響をモロに受けます。景気が良いときには自然とうまくいくかもしれませんが、景気が悪くなれば、収入が一気に落ち込むこともあります。そのための計画を、あらかじめ立てておかなければなりません。
会社勤めのように、安定した収入が得られることを最も重視するのであれば、起業するのはやめましょう。会社経営、自営業、個人事業、フリーランス、自分のために自分で働くことは、あなたには向きません。
収入の不確実性に適用していくためには、収入がなくなることを予測して、収入がなくても事業を継続していけるだけの十分な資金を貯めておきます。
複数の役割
自営業者になれば、自分の好きなことや得意なことだけをやっているわけには行きません。経理、人事、マーケティング、営業、顧客サービスなど、すべての業務を自分でやらなければなりません。
あなたがもしフリーランスのWebデザイナーであれば、Webデザインだけをやっていればよいわけではありません。マーケティングの知識がなければ、マーケティングの基本原則(4P)を手始めにマーケティングを学び、マーケティング活動をしてビジネスを維持していかなければなりません。新規顧客を得るために、営業メールや電話で営業活動もしなければなりません。
本業だけをやりたいのであれば、起業するのは諦めましょう。フリーランスになってはいけません。自営業者として生きていきたいのであれば、本業以外の仕事ができるように、前もって準備しておかなければなりません。
自営業を始める準備ができているかどうかの見極め方
自分のためにビジネスを始める方法を、ステップ・バイ・ステップのガイドとしてまとめるのは、実は、非常に困難です。というのも、事業を起こすことは、一生に一度のことではなく、継続的に何度でも形や方法を変えて行うことだからです。しかし、その準備ができているかどうかを見極めることはできます。
1. 集中して取り組めるか
自分のためにビジネスを始めようと考えたとき、事業を立ち上げ、成長させるための、精神的な集中力と、覚悟が必要です。自分自身に対する覚悟と、顧客への覚悟です。
副業から始める人が多いのは、その覚悟があるかどうか確信が持てないからで、本業を保険として維持しているわけです。事業に対する集中力や収入に自信が持てなければ、自分のために働くことをやめて、雇用されることを選べます。
集中力を維持し、収入も得られることに確信を持てたならば、人に使われるのをやめて、副業を本業とし、自分のために働き始めます。
いざ自分のビジネスを立ち上げれば、仕事に集中し続ける意志の力が必要です。何事も他人に頼らず自分で解決しなければならないので、仕事を投げ出すわけにはいきません。病気も怪我もできません。
仕事がうまくいかないからといって、ビジネスの使命や長期的な目標に関係のない儲け話には、絶対に誘惑されてはいけません。道を踏み外すと、自分のビジネスで成功するための貴重な時間を失い、仕事がうまくいかなくなります。
2. 市場に適合した製品を持っているか
仕事に情熱を持っていたとしても、ターゲット市場のニーズを満たす製品やサービスを持っていなければ、顧客を獲得することはできません。
- ターゲット顧客は決まっていますか。理想的な顧客はどのような顧客でしょうか。どのようにして顧客にアプローチし、ブランド認知度を高めることができるでしょうか。バイヤーペルソナを作成し、顧客セグメンテーションを実施して、マーケティング戦略を適切な顧客グループに合わせます。
- 製品やサービス、そしてビジネスは、競合他社と何が違うでしょうか。ポジショニング戦略を策定することで、独自のブランドを確立し、どのように顧客にマーケティングメッセージを伝えるべきかを決めていきます。
- 製品やサービスは形になっているでしょうか。顧客に使ってもらったときに、最低限でも顧客の満足を得られるでしょうか。実用最小限の製品(MVP)を作り上げるまでには、時間がかかります。
- 様々なデジタルマーケティング戦略をテストし、顧客の多くが評価した、あるいは顧客を多く集められた戦略を選びます。また、改善すべき点を知るために、製品やサービスを利用しなかった、また、利用をやめた顧客の意見を聞くべきでしょう。
3. 人に使われて生きることを終わりにできるか
一般的な雇用形態では、毎月の定期的な収入を受け取ることができ、社会保険や税金は全額自分で支払う必要はなく、退職金や将来の年金については、会社が手続きをするので、何も考える必要はありません。
しなければならない仕事は、雇用主から用意され、スケジュールも決められています。定期的な休暇もあり、有給すらあります。上司が仕事の方針を指示してくれますし、まわりには相談できる同僚もいますので、ほとんど考えることなしに仕事を進められます。
一方、人に使われるのをやめて自分のために働くと、これらすべてがなくなります。
誰かが仕事を用意してくれることもなければ、保険や年金も自分で処理しなければなりません。誰かに従っていれば自動的に毎月給料が銀行口座に振り込まれるということもありません。黙っていても誰かがやってくれる、ということがすべてなくなります。
これと引き換えに、自分が達成したい仕事の目標、人生の目標を、自分で決められることになります。
人に使われるのをやめるには、計画が必要です。
- 小規模のビジネスプランの場合は、財務予測などのビジネスプランを立てるとともに、できれば資金を調達したほうがよいでしょう。
- 事業計画に加えて、健康保険、年金、納税申告のための資金確保、家賃や食品などの生活費に必要な最低限の収入、といった計画を進めます。
- 顧客を得るためのマーケティング計画も必要です。ニュースレターの作成など、顧客にリーチするための方法を学び、実行していきます。製品・サービスが市場に適合しているのであれば、マーケティング計画は自然に整っていきます。
4. 失敗は許されないと分かっているか
「失敗は許されない」というのは、「間違いを犯してはならない」という意味ではありません。製品やサービスをローンチし、データを収集することで、何がうまくいって、何がうまくいかないかを評価し、うまくいかないことがうまくいくように解決するまで、失敗に対処するという意味です。
解決策が見つかるまで問題に取り組み続けるのです。
何か素晴らしいと思うアイディアを思いつき、その製品がターゲット市場に適合するかどうか評価した際、そのアイディアがいまひとつで中途半端なものだとわかるかもしれません。そのとき、必要に応じてビジネスモデルを変更したり、方向性を変えることを考えていかなければなりません。変化や状況に応じて柔軟に対応していけることが重要です。
ビジネスがうまくいかないとき、何が間違えているのかを見つけるために、例えば以下を試してみるとよいでしょう。
- Webサイトのトラフィックデータ、顧客アンケートなど、可能な限りのデータを収集し、問題点を探し出します。
- 複数の問題が見つかったときは、価格戦略など重要な部分からひとつずつ解決策を適用していき、その効果が出ているかを見極めます。一度に複数の変更を行うと、どの変更が効果があったのかの判定が難しくなりますので、ひとつずつ確認していきます。
- 結果が改善するまで、解決策を適用するたびにデータを確認し、微調整を重ねていきます。
- 結果が改善したら、別の問題の解決を試みます。すべての問題が解決することはなく、ひとつ問題が解決すると別の問題が生じてくるので、永遠に、調査と改善を進めます。
顧客のためになっていない製品やサービスを改善していく気がないのであれば、自分のために自分で働くこと、自営業やフリーランスになる準備ができていません。というのも、時間とともに変化する顧客のニーズに、常に対応していく必要があるからです。
5. 自己啓発を続けることに喜びを感じるか
「自己啓発を続ける」といっても、自己啓発本を読みまくり、自己啓発セミナーに通い続けろ、という意味ではありません。
新しい知識や技術を身につけて、自分を進化させ続けなければなりません。起業の準備のために、何かしらのスクールに通って身につけたスキルだけで、将来のあらゆる仕事に対応していけるはずがありません。
フリーランスWebエンジニアとして生計を立てたいと思い立ち、プログラミングスクールに通ってひととおりのスキルを身に着けたとしても、それはWebエンジニアとしての入り口に過ぎず、Webエンジニアとして仕事に対応していくには、自分ひとりで根気よく勉強し続ける必要があります。
Webエンジニアには限りません。ありとあらゆる仕事は、自分で学び、経験から学び、失敗を重ねて仕事に対応していけるようになっていくのです。特に、自分で自分のために仕事をしようと決意した人は、鋭いトゲのある茨の道を進んでいく強靭な意志が必須です。そして、不断の勉強を続けることに喜びを感じなければなりません。
Webエンジニアとしてひとりで仕事をしていくには、プログラミングの勉強だけをしているわけにはいきません。マーケティングチャネルのひとつ、電子メールマーケティング戦術を使うなどして、自分を売り込んでいく必要もあります。
自営業やフリーランスや個人事業主として働いていくための必須事項は、積極的に自分で自分を教育することなのです。
インターネットには、古いものから最新のものまで、ありとあらゆる情報が蓄積されています。図書館や書店、オンラインコース、コミュニティ、YouTubeなど、学びに必要なリソースは無数にあります。学ぶかどうかは自分しだいです。
伝説の投資家ウォーレン・バフェットは「オラクルとオマハ:ウォーレン・バフェットと彼の故郷がお互いを形作った方法」で「毎日本を500ページ読みなさい。それが知識の仕組みで、福利のように蓄積されます」と言っています。

自営業を志すのであれば、自分自身や自分の作品、製品、サービス、スキルを売りたいと思っていないことはないでしょうが、人付き合いや営業は苦手と言っているわけにはいきません。ビジネスにかかわるありとあらゆる役割を、自分が担わなければならないのです。
自分のために働く
とは言っても、睡眠時間も休日も削ってひたすら仕事をし続けなければならないことはありません。人間らしく、健康でいることも、また人生にとって重要なことです。重要なことだけに集中して時間管理を徹底していきます。
主要な業務のみに集中できるよう、財務などは人に任せる手もあります。そうすることで、自営業者としてやっていくストレスは少なくなりますし、成長するための勉強時間も確保できます。
家族との時間、趣味の時間、旅行の時間など、仕事以外の時間を満喫できるよう、仕事とプライベートとのバランスをきちんと取ることで、自分のために自分で仕事をすることの利点を享受できます。