ポジショニングステートメント

ポジショニングステートメントの作成方法

ポジショニングステートメントは、企業が顧客に提供する価値を一言で表すものです。その一言は、要点を押さえ、意味の詰まったものでなければなりません。ここでは、ビジネスに相応しい顧客を獲得するための、ポジショニングステートメントの作り方を紹介します。

ポジショニング戦略を作り出すには、多くのことを考えなければなりませんが、マーケティングの基本原則・マーケティングミックスにとっては必須であり、マーケティング計画を作成する際に必要となりますので、手順に沿って作っていきましょう。

ポジショニングステートメントとは何か

ポジショニングステートメントは、ブランドの目標や目的を顧客に伝えるミッションステートメントやビジョンステートメントとは違って、製品やサービス、ターゲット市場やターゲット顧客を簡潔に説明し、製品やサービスが顧客のニーズをどのように満たすのかを示した社内向けの文書です。

ポジショニングステートメントはビジネスにとっては非常に重要です。なぜなら、ポジショニングステートメントを作成することによって、理想的な顧客に価値を提供する戦略を組み立てられるからです。

競合他社との差別化を図るためには、ターゲットを絞ったマーケティング及び販売キャンペーンを展開するための顧客プロフィールを作り、明確なポジショニングステートメントを作成する必要があります。これはWebサイトのマーケティングでも重要ですし、マーケティングチャネルとマーケティングの基本戦略にとっても基礎となります。

ポジショニングステートメントを作成するには、以下の手順に従います。

  1. ブランドや製品を定義する
  2. ターゲット顧客を特定する
  3. 業界の分類を把握する
  4. 提供する価値を説明する
  5. 競合他社と差別化する

バリュープロポジション(価値提案)は純粋に製品やサービスの説明ですが、ポジショニングステートメントは、より広範に、顧客が得られる価値や競争上の差別化も含みます。

ポジショニングステートメントの作り方

ポジショニングステートメントは簡潔でなければなりません。というのも、ポジショニングステートメントの目的は、自社の特徴を簡潔に説明することだからです。無駄な言葉を省いて5つのステップそれぞれに、どのようにアプローチすべきかを以下に示します。

1. ブランドや製品を定義する

前者のブランドは、顧客が企業やビジネスに抱くイメージであり、ブランドアイデンティティは、顧客にブランドのイメージを表現するために作成する目視できるもの(ロゴなど)や、目視できないもの(価値観やトーンなど)のことです。

そして、後者の製品は、ブランドを実現するために作り上げる実際の製品やサービスのことで、ポジショニングステートメントは、ブランドと製品どちらか一方に重点を置いて使うことができます。

ブランドと製品を定義するためのヒント

ブランドや製品の定義は簡単に思えるかもしれませんが、意外と難しいものです。製品について説明しているつもりでも、実際には別の側面に焦点をあてなければならないことがあります。そのために、以下のヒントを参考にしてください。

自問自答する
なぜ自社が存在しているのか、なぜ事業をしているのか、なぜ毎日仕事をしているのかなど、自分自身に質問をし答えることによって、ブランドや製品についてより明確に定義することができます。
クライアントに尋ねる
製品やサービスに満足しているクライアントほど、製品やサービスについて的確に表現してくれます。ですので、満足しているクライアントがどのように製品やサービスを説明するか、聞いてみます。

2. ターゲット顧客を特定する

顧客プロフィールを考えてこなかった場合は、よい機会ですので、顧客を一文にまとめて表現してみるべきでしょう。ビジネスを継続しているのであれば、典型的な顧客像はすぐにわかるでしょうし、新しくビジネスを始める場合は、理想的な顧客像を作り上げます。

ターゲット顧客を特定するためのヒント

顧客プロフィールは、バイヤーペルソナを作成するように、詳細な項目まで含めて考えたほうがよいでしょう。ビジネスの規模や売上、日頃抱えている悩みなどです。

市場調査
製品やサービスの典型的な顧客像を把握するために、業界についての調査を集め、読んでみます。
データを分析する
CRMソフトウェアを導入しているのであれば、データを収集し、そのデータを深く掘り下げる時間を確保します。顧客の共通点を見つければ、顧客プロフィールを作ることができます。

3. 業界の分類を把握する

自分では商品やサービスが業界のどの部分に分類されるか理解していると思っていても、正確な分類となると言葉に詰まるかもしれません。競合他社が自らをどのように分類しているかを確認すると、手間がかかりません。

業界の分類を把握するためのヒント

自分がどの業界に当てはまるかを把握する一番の方法は、業界周辺を見渡すことです。

日本標準産業分類
競合他社の日本標準産業分類(JSIC)コードを調べて、自社がその業種に当てはまるかどうか調べます。特定のJSICコード調査の研究もありますので、さらに詳しい情報を得られます。
日本標準商品分類
日本標準商品分類(JSCC)コードも同様に調べてみます。

4. 提供する価値を説明する

提供する価値を説明するためのヒント

顧客が商品やサービスを利用することで、顧客は何を得られるでしょうか。顧客が商品やサービスを使うことで解決できると期待しているものは何でしょうか。顧客の立場から考えます。

顧客の問題に焦点を当てる
製品やサービスの機能から説明しがちですが、どのような問題を解決するのか、どのように役に立つのかなど、製品やサービスが解決する課題について議論します。
機能を説明する
次に、問題を解決する機能について、説明します。顧客の問題を解決しない機能の説明は、もちろん不要です。

5. 競合他社と差別化する

顧客が「他の会社ではなくこの会社と取引をしたい」と思う理由は何でしょうか。競合他社とどのように違うのか、どのような価値の提案が自社を際立たせるのかを考えます。

もしエンジニアであれば、提供するのは、優れた技術でしょうか。顧客は優れた技術を求めているのでしょうか。優れた技術が顧客の問題を解決するのでしょうか。顧客が選ぶのは自社ではなく、優れた技術を提供する他社でもよいのではないでしょうか。

競合他社と差別化するヒント

競合他社と差別化を図る価値観を顧客に提示するのは、少々難しいのですが、いくつかのコツがあります。

ちょっとしたプラスアルファを提供する
競合他社が提供していないサービスを追加するのが一つの手です。ささやかなサービスでも、クライアントから感謝されることが多いですし、大きな結果が生まれることもままあります。製品やサービスを使ってもらっていることへの感謝を定期的に伝えたり、ビジネスが順調に進むようになったか尋ねたり、「ちょっとしたこと」ならいくらでも思いつくでしょう。
クライアントに尋ねる
なぜ他社ではなく自社を選んだのか、直接クライアントに尋ねるのが合理的です。インタビューでもアンケートでも、意見の収集方法は色々あります。自分たちで思ってもみなかった観点から意見をもらえることもあり、それをヒントに自分を売り込むこともできるでしょう。

ポジショニングステートメントを作成する

ステップ1から5までを終えたら、次は実際にポジショニングステートメントを書きます。いくつかの典型的なフォーマットを紹介しますが、独自の表現を用いたほうがよいでしょう(それもまた差別化です)。

  • [業界]の[ブランド・製品]は[ターゲット顧客]が[価値]を得るための手助けをしています。お客様は[差別化]という理由で私たちを選んでいます。
  • [業界]の[ターゲット顧客]にとって[ブランド・製品]は[差別化]を提供し、お客様に[価値]をもたらします。
  • [製品]をお求めになる[業界]の[ターゲット顧客]へ、[ブランド]は[価値]を提供します。他社と異なり[ブランド]は[差別化]します。

ポジショニングステートメントは、ビジネスが成長し変化するにつれ、柔軟に変えていきますので、変更できる余地を残して作るのが勘どころです。完成したら、マーケティング計画やマーケティング販促ツールの基準としていき、マーケティングや広告キャンペーンを進める際の参考にします。そして、電子メールマーケティングなどマーケティングチャネルを用いてマーケティングを進めていきましょう。

芦屋 ときお

芦屋 ときお 記事一覧

ソフトウェアエンジニア(フルスタック、主にWeb系)。HTML, CSS, JavaScript, TypeScript, PHP, Python, Go, Vue.js, Express, Node.js, Nuxt, Next.js, Laravelなど。C#, ActionScriptも。デザイン、デジタルマーケティング。