ブランディングの方法

自営業や中小企業のためのブランドを構築する方法

ブランドは、ビジネスと製品やサービスが人々にどのような印象を与えるかを決める重要なものです。そのため、ビジネスの成功に大きな影響力を持ちます。

ブランドを顧客にどう捉えてほしいか、ブランドを顧客がどう捉えるか、それぞれ違いはあろうとも、あらゆるビジネスは、ブランドアイデンティティを表現しています。そのブランドを維持し管理するために、多くの大企業が莫大な費用を投じています。そうしなければ、ソーシャルメディア全盛の今日では、ブランドをコントロールできなくなるからです。

Apple、コカ・コーラ、ディズニー、ナイキ、ルイ・ヴィトンといった名だたるブランドを見てみると、これらのブランドのファンが列をなしているのがわかります。このブランドを作り上げ、守るために、多くの予算を投じているのは、想像に難くありません。

では、資金力のない個人事業主、フリーランス、自営業者では、強力なブランドを作り上げることは不可能なのでしょうか。幸いにも今はインターネットがありますし、Appleの競合になるわけではないでしょうから、大きな費用をかけることなく、ブランドの構築は可能です。

ただし、ブランディングは、ブランドを外の世界にどう見せ、見てもらうかですので、慎重な検討が必要となります。以下5つのステップに従うとよいでしょう。

ブランドを構築する5つのステップ

  1. 調査する
  2. ブランドを定義する
  3. ブランドアセットをつくる
  4. ブランド戦略を構築する
  5. ブランドを洗練させる

このステップに入る前に、ブランドの中核となるブランドアイデンティティについて説明します。

ブランドアイデンティティとは何か

「ブランド」は顧客の目から見た企業・ビジネスの認識で、「ブランディング」は独自のブランドを積極的に作り上げるマーケティング活動です。そして「ブランドアイデンティティ」とは、企業が顧客にブランドのイメージを表現するために作成するすべての要素のことです。

ブランドアイデンティティは、ロゴ、パッケージ、Webサイト、ソーシャルメディアグラフィック、名刺、製品やサービスの紹介、マーケティング企画書、広告まで、ビジネスを作り上げるあらゆるブランドの表現です。そのため、ビジネスの初期に、ブランドとブランドアイデンティティを構築し、確立する必要があります。

なぜブランドの一貫性が重要か

ブランドアイデンティティは、ビジネスのあらゆる側面を貫いているため、顧客を惑わすことのないよう、統一されたメッセージを伝える一貫性があることが重要です。そうすることで、ビジネスに以下のようなメリットが生じます。

強力なブランドアイデンティティ

ナイキの「Just Do It.」は、アスリートでなくとも、目標に向かって戦うことや、体を鍛えることができることを顧客に教え、ナイキを一気に有名ブランドに押し上げました。

ナイキ「Just Do It.」
「21世紀でもっとも人気なスローガン Top5」に選ばれたナイキのスローガン(brandchannel

このスローガンは1988年から現在までずっと使われており、一貫してナイキのブランドの価値を伝えています。メッセージに一貫性のあるブランドは、人が初めてブランドに出会ったときに確立されたブランドのイメージをさらに補強し、そのブランドを心に留め置く、強力なブランドアイデンティティとなります。

信頼性の向上

商品やサービスを購入しようかどうか迷っている顧客は、ブランドに一貫性がないと、各所で目にするメッセージが違うことで混乱したり、ブランドに疑念を抱くようになり、もうひとつ信頼できないと感じることになります。

BMWは「The Ultimate Driving Machine」というスローガンで、「車の運転を愛してほしい」という意味を込めて、今に至るまで「究極のドライビングマシン」を一貫して作り続け、顧客はそのメッセージを受け取っています。BMWは顧客にとっても「究極のドライビングマシン」であり、常に「究極のドライビングマシン」であるがゆえに、信頼され続けています。

BMW「The Ultimate Driving Machine」
BMWの愛されるスローガン「究極のドライビングマシン」(BMW

思い起こさせる力

飲み会への誘いがあったとき、あなたのブランドは、思い起こさせる力を持っていたということになります。

顧客が商品やサービスを購入したり、広告などのマーケティングメッセージでブランドを体験すると、顧客にブランドが認知され、心に残ることになります。影響力の小さいブランドだと、あっという間に忘れ去られますが、強力なブランドの場合、顧客が何かを買おうとするふとした瞬間に、ブランドを思い起こし、購入する可能性が高まります。

冷たいジュースを飲みたいと思ったとき、コカ・コーラを思い起こす人も多いでしょう。それは、コカ・コーラにブランドを思い起こさせる力があるからです。ブランドを継続的に一貫性をもって宣伝すると、ブランドを想起させる力が強まります。

コカ・コーラ「Open Happiness」
コカ・コーラのスローガンのひとつ「Open Happiness」(Wikipedia

自社のブランドを構築する方法

自社でブランドをつくらなければ、自社の意図とは異なるブランドを、顧客が定義してしまいます。ですので、ブランドを構築し、維持する作業が必要になってきます。

1. 調査する

まずは競合他社や顧客について調査します。ターゲット市場を研究して、独自のブランドを作り上げる必要があります。

競合他社は、ターゲットとなる顧客が同じか似通っている場合が多くなります。競合他社は、どのように顧客にブランディングしているでしょうか。Webサイトや広告などをよく見て、研究します。

ターゲット顧客は、製品やサービス、そして業界に、どのようなイメージを持っていて、どのような点に惹かれているのでしょうか。どのように意思決定をして購入しているのでしょうか。販売している製品やサービスと顧客との間には、どのような関連性があるのでしょうか。

10代の女性なのか、40代の男性なのかでも、ブランドの表現は変わってきます。顧客セグメンテーションを行って、頻繁に購入する顧客を特定するなどし、顧客層に合わせてブランドを構築することもできます。

クライアントにアンケートに答えてもらったり、インタビューをしたりして、製品やサービスをどのように見ているか、感じているかを知るのも、ブランドを作り上げる材料として、有効です。

調査を行う際のヒント

調査過程をよりスムーズにするヒントです。

バイヤーペルソナ
バイヤーペルソナは、ターゲット顧客の特徴を表すための便利なツールです。これは、提供する製品やサービスにとって、職業、年収、年齢、性別、悩みなど、詳細を記載した、理想的な顧客像です。B2Bマーケティングの場合は、企業規模・従業員数など、企業向けの属性を加えます。バイヤーペルソナを作成することで、顧客に対してどのようにブランドメッセージを伝えるかを明確にできます。
競合他社ブランド
既存顧客へリサーチする際には、競合他社をどう思っているかを、顧客に尋ねます。競合他社のブランドへの認識を知ることで、ブランドアイデンティティがより明確になります。
CRMソフトウェア
顧客関係管理(CRM)ソフトウェアを活用することで、顧客セグメンテーションを自動的に行うことができます。かけられる時間やコストを許容できるのであれば、Googleスプレッドシートなどで管理することも、できなくはないでしょう。

2. ブランドを定義する

ブランド構築に役立つデータを調査で収集したら、データから得られる知識を利用しつつ、ブランドを定義していきます。自分が、あるいは自分の組織が、どのような目的でビジネスを行っているか、ミッションや価値観や個性、そして、顧客に何を提供するかを、ブランドを構成するものとして加えていきます。

そして、ブランド名とキャッチフレーズ・スローガンを決めます。自営業者・個人事業主・フリーランスの場合ですと、自分の名前をブランド名とすることもあるでしょう。例えば、政治家や芸能人がそうですね。ただし、ドメイン名やソーシャルメディアのアカウント名が、すでに取得されている場合が多いので、シンプルで記憶に残りやすい、名前以外のブランド名にしておくほうが無難です。

いずれにしろ、ビジネスに最も重要で、長く使うものですから、慎重に検討します。

ブランドを定義するためのヒント

ブランドを決めていく段階で、ヒントとなるものをいくつか挙げます。

フィードバック
友人、知人、従業員、顧客など、他の人の意見を求めます。多くの人にアンケートを取り、ブランドに関する考えを集めます。自分ではよいと思っているブランドでも、他の人はそうは思わず、ふさわしくないと苦言を呈されることもあります。ブランドが感情を揺さぶるかどうかについても確認します。
ポジショニング
ブランドを定義するときには、ポジショニング戦略も同時に策定します。ブランド戦略とポジショニング戦略は密接に連携し、同期することで、強力なブランドポジショニングを構築することができるからです。ポジショニングステートメントとブランドが一致していなければ、これもやはり顧客を困惑させることとなり、ブランド戦略の一貫性が意味のないものとなってしまいます。
SWOT分析
SWOTとは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字をつなげた造語で、SWOT分析とは、内部環境である、強み(自社のビジネスの長所)、弱み(自社のビジネスの短所)、外部環境である、機会(有利に働く社会や業界の変化)、脅威(不利に働く社会や業界の変化)をそれぞれ確認し、分析することです。SWOT分析で、ビジネスを形成する重要な要因を調べることができ、ブランドを定義する情報として役立ちます。

3. ブランドアセットをつくる

ブランドアセットとは、会社名、スローガン、キャッチフレーズ、価値提案、ロゴ、フォント、カラーパレット、製品パッケージなど、ブランドを構成する有形無形のブランド資産です。

ビジュアル要素の中で最も目立ち、中心となるのは、ロゴです。ロゴは、Webサイトやパッケージから、マーケティング提案書・企画書まで、ビジネスのあらゆる部分で表示されます。ロゴを作成するには、カラーパレット、タイポグラフィ、イコノグラフィを定義しなければなりません。

マクドナルドのロゴ
マクドナルドのパッケージの共通のロゴ

ロゴは、ひと目見たときにブランドを想起させる、シンプルでどこにでも使える汎用性の高いものである必要があります。ディズニーのロゴは、ディズニーランド、ディズニープラス、あらゆる商品のパッケージなど、いたるところで使われています。

使う言葉もまた重要です。Webサイトの文章やソーシャルメディアでの会話など、ブランドのパーソナリティに基づいたものでなければなりません。高級品を販売しているのに、マナーの悪い言葉を使っては、ブランドがぶち壊しになります。

ブランドアセットを作成するためのヒント

視覚的なブランド表現を作成するためのいくつかのヒントです。

最小のバリエーション
例えばロゴを決める際に、カラーパレットやタイポグラフィなど、いくつかの要素を決めますが、バリエーションは最小限にすべきです。そうすると、ブランドの一貫性を保てます。
テンプレート
ロゴやメール署名など、繰り返し利用するブランドサインは、テンプレートを作成しておきます。これもまた、ブランドの一貫性を保ち、顧客が混乱するのを防げます。

4. ブランド戦略を構築する

ブランドを確立したら、次はいよいよ外の世界に向けて発信していきます。そのためには、具体的な目標を達成するための、ブランドを顧客にどこでどのように見せていくかを含めた、ブランド戦略を策定する必要があります。

では、具体的な目標とは何でしょうか。なぜ新しいブランドを作るのでしょうか。古いものを新しくするのでしょうか、新しいオーディエンスにリーチするためでしょうか、市場シェアを増やすためでしょうか、新製品や新サービスをリリースするからでしょうか。マーケティング目標を決めたら、次にマーケティング戦略を決め、マーケティング戦術を実行していきます。

実施計画にはマーケティングの基本原則を組み込み、マーケティングの基本戦略とチャネルでブランドを展開していきます。中小企業のマーケティング計画は、マーケティングの4Pを念頭に置いておくべきでしょう。

ブランド表現の最初のひとつは、自社Webサイトです。ブランドは、WebサイトのURL、各Webページのコンテンツ、使っている写真やグラフィックにまで及びます。AppleのWebサイトのように、すべてが統一されていなければなりません。

Appleの「iPhone」Webサイト
すべてが統一されたAppleのWebサイト

ブランドは、Webサイトだけではなく、ソーシャルメディア(SNS)や、すべてのマーケティングキャンペーンや広告に表出されます。いずれも、自分自身を売り込む方法として、ブランドを宣伝するための重要な方法です。

ソーシャルメディアは、顧客と直接会話するためのマーケティングチャネルで、ブランドの一貫性を保つため、投稿や会話の表現がブランドとして確立されていなければなりません。話し方のトーンはブランドと合っているかどうか、詳細を考える必要があります。

ブランド戦略を構築するためのヒント

ブランド認知度を高め、ブランドを強化するのに役立つ、ブランド戦略を構築するための、いくつかのヒントです。

感情への影響
よく練られたブランド戦略は、顧客の要望と結びつき、感情に訴えかけます。価値提案が要望に係り、写真や動画などが感情を呼び覚まします。ブランド戦略を構築する際には、顧客のどのような感情を呼び起こしたいのか考えます。
顧客エンゲージメント
ブランドに愛着を持ってもらうために、ソーシャルメディアの一貫性のある投稿や、問い合わせへの迅速な対応など、顧客を巻き込んで、顧客との関係を構築することを考えていきます。
オンラインとオフラインとの一貫性
オンラインとオフラインとの一貫性を保つようにします。看板やパッケージ、店舗やオフィスの装飾などのオフラインのブランディング戦略も、オンラインと一貫性があるようにします。

5. ブランドを洗練させる

ブランド公開後は、効果測定を行い、測定結果に基づき改善していく必要があります。そうすることで、ブランドはビジネスを象徴するという顧客に対しての約束を果たすことができます。

広告キャンペーンの指標を分析して、ブランド戦略が機能しているか、成果を上げているかを検証します。また、顧客調査を行ったり、Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを用いると、Webサイトでの顧客の行動がわかるので、ブランド戦略の効果を検証できます。ネットプロモータスコア(NPS)というマーケティング用語がありますが、これは、顧客満足度の指標を表したもので、これを用いることでもブランド戦略の成否を判定できるでしょう。

また、ソーシャルメディアのコメントを確認すると、顧客がブランドについてどのように捉えているかを知ることができます。調査結果に基づいてブランディングを調整し、それが成果を上げているかを随時確認していきます。ブランドが洗練されるまで、調査と修正を繰り返します。

ブランドを洗練させるためのヒント

ブランドを洗練させるためのヒントをいくつか提示します。

競合他社の模倣
あまりに競合他社のブランド施策などを参考にしすぎ、模倣してしまうのはよくありません。競合と同じようになるということは、ブランド定義が十分になされていないからで、ブランドの個性もないということですので、顧客との関係も期待通りには行かないでしょう。
感情面での影響
ブランドが顧客にどのような感情の動きをもたらすのか、検討すべきです。感情的なつながりを作ることで、ブランドと顧客との関係が生み出されます。調査し、分析し、適切な感情的な影響を生み出しているかを確認します。
ターゲット顧客
ブランドを洗練させていく段階では、顧客がブランドをどのように捉えているかを調査し、確認します。ブランドに共感していない場合は、バイヤーペルソナがずれていて、適切な顧客にリーチできていないことが考えられますので、ターゲットオーディエンスの特徴、動機、行動をできるだけ詳細に反映させるように、ペルソナを調整します。

ブランド構築について

ブランドを構築するには、計画と十分な時間、そして、顧客に一貫したブランド体験を提供していくための取り組みが必要です。

ブランドは固定されたものではなく、日々変わっていく顧客の関心や流行などに対応していくために、柔軟性を持つことが肝心です。広告キャンペーンの変更や、陳腐化したブランドアイデンティティの更新など、ブランドを長期的に維持していくために、変化を許容し、ビジネスを際立たせるブランド構築をしていくことが重要です。

芦屋 十貴夫

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あしやときおと申します。Webプログラミング、Webデザイン、マーケティングを生業としています。