フリーランスとして仕事をしている以上、自分自身を売り込むのは必須です。自分を売り込めば仕事が得られますし、収入につながります。
自分を売り込むということはすなわちマーケティング活動をすることですので、マーケティング戦略を構築して実行すれば、収入が得られるわけです。
フリーランスは、専門を極め、より自分を生かしたいという積極的な動機をもって、会社から独立して行う場合が多いのですが、中にはネガティブな理由でフリーランスとなる人も少なからずいるでしょう。アメリカのフリーランスが雇われ会社員よりも収入が多いのは、前者のようなポジティブな理由によるところと思われます。
実際、アメリカにおいて、フリーランスになるためにフルタイムの仕事を辞めた人の75%は、以前と同じかそれ以上の賃金を稼いでいます(Upwork, 2020)。アメリカの平均年収は600万円以上ですので、アメリカのフリーランスの大部分は、最低でも600万円の年間収入があるということになります。
一方、日本のフリーランスは年収200万円~300万円未満が最も多くなっており(内閣官房日本経済再生総合事務局, 2020)、雇用者負担の社会保険などを全額負担しなければならないこともあり、実質の収入は極めて低く、生きていくのさえ厳しい方も多いことが想像できます。なお、4人家族で世帯年収が約250万円で貧困世帯と見なされ、生活保護も考えなければならないほどの困窮です。
さて、フリーランスになったばかりの方や、新型コロナの影響で収入が落ち込んでいる方、そして、より収入を増やしていきたいという方は、仕事を有益なものにするために、簡単なことからでもマーケティングやセールスを学んだほうがよいでしょう。
ただ、フリーランスにとってマーケティングは、慣れない特殊なスキルを必要とするため、専門に特化しがちな方にとっては、難しいはずです。マーケティング活動をしたことがあっても、自分をアピールするのは気が引けるかもしれません。
しかし、自分のサービスを売れば収入になりますので、自分自身を売り込むことは、フリーランスにとっては必要なことです。いくら素晴らしいスキルや商品を持っていても、マーケティングやセールスをしなければ、誰も買ってくれないのですから。
幸いにも、フリーランスを始めるにも続けるにもほとんど資金は必要ありません。ただし、理想的な顧客にアプローチしたり、顧客に自分を見つけてもらうために、時間をかける必要があります。その効果が確認されているマーケティング戦術を活用して、収入を増やし、フリーランスとしての仕事を成功させていきましょう。
フリーランスの自分をマーケティングすることの重要性
フリーランスと言えど、フルタイムであろうがパートタイムであろうが、小さな会社の社長であり経営者です。成功するかどうかは、自分をマーケティングできるかどうかにかかっているとさえ言えます。
自分を売り込む方法を学ぶには、自己PR、アウトリーチ、マーケティング調査などを組み合わせる必要があります。
例えば、
- 他のフリーランスと差別化する
- Webサイトでポートフォリオを紹介する
- 潜在顧客のリストを集める
- 自分をアピールするためのオンラインプレゼンスを構築し維持する
こうすることで、
- 自分の情熱や収入に見合った仕事を継続的に確保できる
- 好ましくない顧客を遠ざけられる
- ネットワークが構築され紹介を増やすことができる
- 業界の専門家としての地位を確立できる
といった効果を呼び寄せることができます。
顧客からの依頼が最初から殺到するようなフリーランスはそうそういません。それに、日本の場合は先進諸国とは違って新型コロナウィルスの惨禍で無条件に収入が保証されるわけではなく、フリーランスには特に厳しい状況ですので、なおさら自己アピールをしていく必要があります(本質的には主権者である私たちが積極的に政治に参加して社会そのものを変えなければならないのですが)。
しかし、慣れないこのハードルを超えてしまえば、マーケティングやセールスを、週に一度とか月に一度のタスクにしてしまえます。
ここで、日本のフリーランスの3倍も4倍も収入の多いアメリカのフリーランスが、どのような活動をしているのか見てみます。

彼らは、マーケティング、ネットワーキング(ネットワークづくり)、新規顧客の開拓(顧客リスト集め)に25%の時間を費やしています。4日のうち1日、1日8時間の労働時間のうち2時間は、ビジネス構築のための仕事をしているわけです。
そして、管理業務に23%の時間を費やしていますので、「本業」のクライアントワークは業務時間のうち半分の割合です。1日8時間の労働時間とすると、実に4時間を本業以外の仕事に費やしています。
そして、本業の技術や知識ももちろん大事ですが、それ以外のコミュニケーション、批判的思考、リーダーシップ、協力(コラボレーション)などのソフトスキルや、マーケティング、財務管理、交渉、顧客・仕事探しなどのビジネススキルも、本業と同じくらい非常に重要なものとしています。
フリーランスとして自分を売り込むための5つのヒント
フリーランスとして事業を順調に進めるには、スモールビジネスの視点からマーケティングに取り組む必要があります。以下のヒントを参考に、ターゲット市場を調査し、計画を立て、継続的な販売戦略、マーケティング戦略を立てていきます。
1. マーケティング手法を整理する
フリーランスを始めたばかりのときは、マーケティングに時間を十分に使えます。しかし、一度仕事が入ってくると、真っ先に切り捨てがちなのは、マーケティングやセールスです。これは絶対避けなければなりません。TrelloやAsanaなどのプロジェクト管理ツールを使うなどして、マーケティングに使える時間を必ず確保します。
- ソーシャルメディアやマッチングサービスなどの仕事獲得プラットフォームまで、定期的に更新が必要なプロフィールをリストアップします。
- 顧客へアプローチしたプレゼンを記録し、会話を保存して将来の参考にします。
- 同業他社のマーケティング事例を集め、スクリーンショットやリンクなどをまとめたスワイプファイルをつくります。
- 既存の同業者とのコンタクトや、ターゲットにできそうなニッチな市場、キーワードリストなどをまとめます。
2. フリーランスのプラットフォームのプロフィールを最適化する
大抵のフリーランスは、クラウドワークスやランサーズなどの様々なプラットフォームに登録し、プロフィールを作成しています。日本ではLinkedInが活発ではありませんが、英語ができて海外の仕事も問題ない人はLinkedInも活用できます。いずれにしろ、プロフィールを徹底的に作り込むのが必須です。
必要な項目だけではなくすべての項目を埋めて、更新していなければポートフォリオを追加し、ソーシャルメディアのアカウントにもリンクを貼ります。フリーランスのプラットフォームはアクティブなユーザーを評価する傾向にありますから、たとえ使っていなくとも、プロジェクトマネージメントツールなどにリマインダーを設定しておき、定期的に更新していきます。
プロフィールを完成させる
自分の業界やスキルに関連したキーワードを使って、価値のあるサマリーを書くことです。プロフェッショナルで魅力的なヘッドラインもつくります。
仕事内容を最適化する
職務内容ではなく実績としての表現とし、雇用主やクライアントにどのように貢献したかを明記することで、自分の経験をより明確にします。
スキルや推薦文を追加する
求人広告などでどのようなスキルが必要とされているか調査し、そのスキルをキーワードとしてプロフィールに追加します。
積極的にプラットフォームを利用する
仕事募集を待ってそれに応募する受動的な使い方だけではなく、プラットフォームを通して企業にアプローチするなど、積極的に使っていくことが肝心です。
3. Webサイトやポートフォリオサイトを作る
フリーランスのマッチングサービスやマーケットプレイスで仕事を見つけることもできますが、最終的には自分のWebサイトやポートフォリオサイトに誘導したいところです。WebサイトはWixやJimdo、もしくはWordPressを使って簡単に作ることができます。
つくる際は、競合あるいは他業種のフリーランスを参考にします。「私について」や「実績」などのページをどのように構成しているかなど、ヒント1で集めたスワイプファイルを確認し、イメージを固めてから設計します。
検索エンジン最適化(SEO)は時間がかかりますが、オーガニック検索対策をしているのといないのとでは、ビジネスの結果に大きく差が出ます。そして、一度つくったらそのままにせず、定期的に更新することが肝心です。
4. 趣意書を送る
フリーランスのマーケティングには、自分を売り込むことも含まれています。中には自己アピールが苦手な人もいるでしょうが、顧客に連絡を取り、自分を紹介することは、新しい仕事を確保するための最も重要な方法のひとつです。フリーランスと仕事をしている人を調査して、電子メールなどで送ってみましょう。
- なぜ相手に電子メールを送ったのか、どこで相手を知ったのか、相手のことを知っている証拠(相手の最近の功績を褒めるだけでもその証拠になります)などを含めた短い文章から始めます。
- 自分がどんなサービスを提供しているか、どのような顧客と仕事をしたことがあるかを、エレベーターピッチで説明します。
- 相手にはどんな問題があってその問題をどのように解決するのか(つまりは相手が自分を雇う理由です)、そのために自分が相手に何を提供するかを明確にします。
- それを実現できる証拠、例えば同様のプロジェクトの成果など提示します。
- 最後に、行動を促す言葉を入れ、電子メールや電話での問い合わせを促します。
言いたいことは山ほどあるはずです(言いたいことがまったく出てこないのであれば、フリーランスとしてやっていくのは苦労します)。それを数行にまとめるのは難しいかもしれません。相手は本を読みたいとは思っていませんので、例文を探したり、ライティングの勉強をしたり、コミュニティなどでアドバイスを求めたりして、趣意書を完成させます。
書いた文書は、誰かに送るためだけのものではありません。エレベーターピッチは、誰かに合ったときや、知り合いに連絡をとったときにも使えるものです。
Upworkの調査によると、オンラインリソースよりも個人的なコンタクトから仕事を得る傾向が大きいので、これを参考にするとよいでしょう。
仕事を得るのは、友人や家族(48%)、以前の顧客(フリーランス)(46%)、ソーシャルメディア(42%)、同業のコンタクト(33%)が多く、続いて、オンライン広告・クラシファイド広告(24%)、オンラインジョブボード(22%)、一般のWebサイト(22%)、フリーランス専門Webサイト(22%)、以前の顧客(フルタイム)(14%)などとなっています。
5. ソーシャルメディアに積極的に参加する
TwitterやFacebookでの活動は、すぐにリードを生み出せるとは限りませんが、どちらのツールにもフリーランスとして収入を増やしていける可能性があります。個人アカウントではなく、ビジネスアカウントで活動します。ここでもプロフィールはよく考えて記載します。
なお「リード」とは、フリーランスとしての自分を知っていて、自分のビジネスに興味があり、会話するなど接点があり、将来的に顧客になる可能性のある人のことです。
投稿するだけではなく、次のようなこともできます。
- Twitterの会話に参加します。自分の業界やスキルのスレッドを見つけて、専門知識を学びつつ、そのスレッドに参加していきます。もちろん「教えて君」は嫌われます。
- Facebookのグループに参加します。Twitterと同じく、自分の業界やスキルに関係するグループを検索して参加します。顧客の業界に関係あるコミュニティで情報収集したり、他の業界の人たちとネットワークをつくっていくことも試してみます。
自分を売り込むときに避けるべきこと
オンラインでもリアルでも、プロとしてのコミュニケーションと一貫したアプローチを念頭に置きます。誰にアプローチするか、どのようなアプローチをするかを慎重に考え、結果を最優先して行うべきです。
顧客の時間を無駄にしない
顧客が自分に簡単に連絡できるようにするとともに、あらゆるコミュニケーションのトーンや文法に一貫性をもたせます。下手な広告的なスパムメッセージや、誰にでも送るような一般的な内容のメールを送らないようにします。
ファストフードのメニューのようにスキルを列挙しない
何ができるかをアピールするために、スキルを羅列するのは止めましょう。例えば、Webデザイナーであれば、
- レスポンシブデザイン
- HTML、CSS、JavaScript
- WordPress
- Photoshop、Illustrator
- …
といったようにです。
そうではなく、自分がどのように顧客の問題を解決してきたかという、成果を売り込みます。その成果によって、専門性を証明できます。
フリーランスのためのマーケティング:最後に
フリーランスは、日本のように急激に衰退している社会において経済的安定を得る生き方として、むしろ、給料が上がらずいつ首を切られるかわからない会社員よりも、有利です。ただし、フリーランスとして活動しているからには、待っていても仕事は得られません。収入源を構築して収益性の高いスモールビジネスにするために、積極的に自分を売り込んでいかなければなりません。