ECビジネスを始める

Eコマースビジネスを始めるための10ステップ

自分自身のEコマースビジネスを立ち上げて、収益を上げたいと思っている人は、存外多いかもしれません。

特にインターネットでの活動を事業の中核に据えている、Webデザイナー、プログラマー、マーケターなどのIT系の仕事をしているフリーランスにとっては、手掛けたい事業のひとつとなっているでしょう。

Eコマースは、上司もいない、厳しい労働時間もない、在宅ビジネスの夢と捉えている人も多いのではないでしょうか。

このビジネスで大きく成功するのは難しいことですが、取り掛かるのに躊躇し、機会を逃すのは勿体ないですし、思っているほど難しいものではないかもしれません。

Statistaの調査によると、世界の小売Eコマースの売上は、年20%ほど成長しており、今後も2桁%の伸びが見込まれます。日本では、ここ30年ほど経済が成長せず、アベノミクスで実質賃金も一人あたり実質GDPも大きく下がり、日本のEコマースの成長率は、経産省によると一桁%に留まっています。

そうはいっても、成長していることは間違いありませんので、参入して成功する機会は十分にあると言えましょう。

オンラインビジネスは、オフラインでの商取引とは異なり、実店舗を持たず、取引プロセスもオンラインで、配送コストがかかります。それに、顧客が製品に触ることができないのが欠点となり得ます。

幸いなことに、このような課題を解消するために、限られた資金でも殆どのことを可能にするツールやサービスが数多く提供されています。

このガイドでは、Eコマースビジネスを始めるための10ステップの方法をご紹介します。

ただし、ドロップシッピングは扱わず、独自のEコマース製品を開発し、販売したい人を対象としています。ドロップシッピングの利益率は非常に低く、顧客サービスを負担しながら製品の取り扱いを他社に任せることになり、リスクが高いからです。

Eコマースビジネスとは?

まず、Eコマースについてですが、「Eコマース」とは、エレクトリックコマース(電子商取引)の略で、日本では「EC」という言葉がよく使われる、企業や個人が、インターネットを介してモノを売買できるようにするビジネスモデルです。

よって、Eコマースビジネスとは、Eコマースというビジネスモデルを採用する事業のことです。そして、Eコマースビジネスには、販売する製品の種類などに応じて、さまざまな形態や規模があります。

Eコマースビジネスを始めるためには、製造、保管、梱包、配送、顧客サービス、そしてオンラインストア(ネットショップ)など、Eコマースの基本的な知識を身につけなければなりません。

本格的なEコマースビジネスでは、これらのステップの大半を自社で管理しますが、それでも輸送、配送、保管は、外部のパートナーに委託する場合が出てきます。

ダウンロード可能なソフトウェア、あるいはオンラインで完結するコンテンツなど、デジタル製品の場合は、梱包や保管や物流に気を回す必要はなくなります。

基本的には、販売する製品や選択するモデルによって、必要なステップが異なります。それぞれの段階に応じて、製品を市場に送り出すのに役立つツールやパートナーがあります。

ゼロからEコマースビジネスを始めるには

Eコマースビジネスを始める際に、まず必要なのが、ビジネスアイデアです。条件や制約を抜きにして、自分が作りたい、売りたい製品やサービスを考えてみます。それが後に世界的なビジネスになるか、自腹でやりくりしながら維持していくようなホームビジネスになるかは、さて置きましょう。

アイデアが固まったら、市場やターゲット顧客などを調査し、経済的にやっていけそうかどうかを中心とした事業計画を立てます。

その後は、法人登記やコーポレートアイデンティティやブランドアイデンティティの作成をし、製品開発をしていきます。続いて製造やパッケージングを手掛け、製品を販売するオンラインストアを立ち上げ、販売とマーケティングを始めます。

Eコマースビジネスを成功させるための手順

  1. ビジネスアイデアをつくり出す
  2. 市場を調査し実現可能性を問う
  3. 事業計画を立てる
  4. 法人登記をする
  5. コーポレートアイデンティティをデザインする
  6. 製品を開発する
  7. 製造と梱包の手配をする
  8. オンラインストアを立ち上げる
  9. 保管、輸送、フルフィルメント、顧客サービスを考慮する
  10. 販売とマーケティングを行う

1. ビジネスアイデアをつくり出す

一番先に決めるべきことは、ビジネスアイデアです。なにかしらオンラインビジネスを始めようと考えているのであれば、おぼろげながらでもアイデアがあるでしょう。

アイデアにはシンプルなものから複雑なものまであります。また、ほとんど準備の必要のないものもあれば、多くの準備が必要になるものもあります。

誰もが思いつくものであれば、競争相手が多くなりがちで、成功するには多くの投資が必要になります。良いビジネスアイデアは、収益性の高い事業となるものです。

ビジネスアイデアをつくり出すヒント

生涯を通じて取り組むビジネスアイデアもありますし、本を読んでいるときにふと思いつくアイデアもあります。ブレインストーミングをしてもいいですし、インターネットで検索しても構いません。そして、調査のフィードバックから得た情報をもとに、アイデアを進化させ、改善していかなければなりません。

ここで気をつけるべきは、「金を稼ぐために何を売ればよいか」と考えず、「人が金を払ってまで手に入れたいものは何か」と考えます。「何が売れるか」ではなく「何を買うか」と視点を変えることです。

ただし、売れるものなら何でもよいということではありません。自分や自社の信念・理念・価値・倫理に従うとともに、ブランドロイヤルティを向上させる方向で取り組むべきです。

パブテストをする
オーストラリアの「パブテスト」についてはここでは説明しませんが、アルコールが人の感情を開放しているときに、見知らぬ人に自分のアイデアを話してみます。よい反応が返ってくるでしょうか?
お婆さんに説明する
専門的な議論を、アインシュタインが言うように、お婆さんに分かってもらうように説明できるでしょうか?分かってもらえるのであれば、アイデアが理解しやすいものであるとわかります。

この2つのヒントは、レイシズム・セクシズム・エイジズムを含んでいるので、あまりよい例とは言えませんね。要は、手掛けるビジネスに関して詳しくない人に、自分のアイデアを話して理解してもらえるかどうか反応を探ってみる、ということです。

2. 市場を調査し実現可能性を問う

ビジネスアイデアが固まったら、それが実現可能かどうか、市場調査をしなければなりません。市場の特徴や規模を明確にしましょう。ビジネスアイデアには十分な市場規模があるのか、製品は実際に生産できるのか、確認します。

将来の予測も必要です。製品ライフサイクルはどうなるのか、リスクや時間的な制約はあるのかどうかなどを、明確にします。

市場を調査し実現可能性を問うヒント

インターネットには情報やデータが溢れています。必要なものはほとんどインターネットで見つかりますので、基本的に調査はインターネットで行います。アンケートを行ったり、専門家にインタビューするのも有効です。法規制についての調査は必須です。

オンライン調査をする
市場調査と並行して、ターゲット顧客にアンケートで質問し、彼らにリーチできるかどうかを確認します。
批判する
よいアイデアを思いついたら、勢い楽観的になり、チャンスしか見えなくなり、リスクを見逃しがちです。常日頃からそうですが、批判的に物事を見るようにします。

3. 事業計画を立てる

事業計画、ビジネスプランを立てるのは必須です。なにか思いついたらすぐに実行してみる、なんてことをするのは危険です。

事業計画には様々な形態がありますが、資金を調達したりビジネスパートナーを呼び込むことを考えないのであれば、込み入った詳細な文書を用意する必要はありません。

事業計画を立てるヒント

ステップ1のアイデアを定義し、ステップ2で調査した市場を明確にし、投資額、成長率、固定費、製品の価格帯、粗利益率などの仮説をもとに、事業計画をつくり上げていきます。

事業計画を進化させる
事業計画は、事業を始める前につくって終わりではありません。事業を進めながら、修正や改善を加えて、随時、継続的に進化させていくものです。
KPIを活用する
顧客獲得単価、平均注文額、コンバージョン率、顧客維持、顧客生涯価値など、重要な指標を基に、計画を組み立てます。

4. 法人登記をする

片手間な副業や本業の傍ら、小遣い稼ぎにEコマースビジネスをしようとすべきではなく、法人として専念するのが安心ですが、個人事業主・フリーランスでも可能です。Eコマースビジネスを始めるには、時間も資金も必要です。

法人登記のヒント

会社設立に関わる手続きは、専門家に依頼するとよいでしょう。それほど大きな費用はかかりません。社名や住所は後から変更できますが、税金が発生するので最初からビジネスに相応しい名前を考えます。

起業した人に聞いてみる
周りに事業を立ち上げた人がいれば、アドバイスを求めるのも有効です。成功した体験よりも、うまく行かなかったこと、困難だったこと、失敗したことなど、負の面を聞いておいたほうが役立ちます。
初期投資を低く抑える
この時点では、事業が成功するかどうかはわかりません。初期投資はできるだけ圧縮したほうがよいでしょう。いきなり大規模なサービスを提供しようとしないことです。
維持費を低く抑える
ランニングコストも可能な限り低く抑えるべきです。運用資金が足りなくなることもありますので、慎重に行動します。

5. コーポレートアイデンティティをデザインする

ステップ1のビジネスアイデアで、すでにブランド、ロゴ、ショップ名などのアイデアもつくっているはずです。ここでは、これらをブラッシュアップさせて、完成させます。ロゴなどのデザインに関しては、専門家に依頼するのもよいですし、デザインの心得があるのであれば、ご自身でつくってもよいでしょう。

コーポレートアイデンティティをデザインするヒント

コーポレートアイデンティティについては、ブランドポジショニングも同時に行うことができますが、社名やロゴ、タイポグラフィなどの、主なブランド属性を決めるだけでも十分な場合もあります。Eコマースストアに必要なドメインも取得しておきます。

ソーシャルメディアを開設する
ドメインや店舗名が決まれば、マーケティングチャネルとして使うか使わないかは別として、各SNSも開設しておきます。後から希望の名前で取得できずに困惑することもあります。
商標登録をする
競争の激しい業界であれば、商標登録も検討したほうがよいでしょう。

6. 製品を開発する

ステップ5のコーポレートアイデンティティの作成を終えていなくとも、製品開発を進めることができます。ただし、コーポレートアイデンティティと製品とは密接に関連しています。

製品開発のヒント

製品開発には、実現可能性の調査、設計、試作品の作成などが含まれます。独自性の強い革新的な製品の場合は、特許申請を行うこともあります。

アウトソーシングする
自社開発と制作の場合もありますし、外注することもあるでしょう。後者の場合は、専門家の仕事に相応しい対価を支払い、知的財産権に関わる契約も結ぶべきです。
クラウドファンディングを活用する
試作品が完成したら、市場に投入する前に、クラウドファンディングを活用するのもよいでしょう。様々な意見や反応を得られます。

7. 製造と梱包の手配をする

デジタルではなく物理的な製品の場合、製造や梱包を考慮しなければなりません。自社生産を行うのか、工程の一部または全部を外注するのかを決めます。

製造と梱包のヒント

製造の詳細仕様をつくり、品質基準を定め、製造数を決めます。製造時に梱包するのか、配送時に梱包するのかも決めなければなりません。

法規制を考慮する
製品の種類や市場によっては、認証を取得する必要があったり、規制要件があるかもしれませんので、調査します。
ラベリングする
製品や市場によっては、原材料を明記したラベルを貼らなければならないこともあります。

8. オンラインストアを立ち上げる

Eコマースプラットフォームにオンラインストアを開設するために必要なものが揃ったところで、どのプラットフォームを利用するかを決めます。オンラインストアビルダーで、Webサイトのデザイン、商品の追加、決済ソリューションとの接続、在庫情報の入力など、ストアのセットアップを始めます。

オンラインストア立ち上げのヒント

まず、プラットフォームを選ぶ必要があります。すでにWebサイトを開設している場合は、Eコマース用の機能を追加するだけで済むかもしれません。あるいは、会社のWebサイトとは独立して、Eコマースサイトを立ち上げることもできます。

適切なプラットフォームを選択する
要件に合うかどうか、どの要件が優先されるかを考慮して、調査します。WixShopifyなどや、自由度の高いWooCommerceなど、WordPressベースで好みのショップをつくることもできます。ただし、あらゆる機能を詰め込んで外部ベンダーに依頼するのは避けるべきでしょう。マーケティングを含め、主要な事業活動を外部委託すると、数百万円、数千万円、場合によってはそれ以上のコストがかかります。
マーケティングチャネルを検討する
宣伝などに利用するマーケティングチャネルを検討します。例えば、アフィリエイトマーケティング、Amazon、Facebook、Instagramなど、特定のチャネルとの連携が優れているプラットフォームもあります。すでにマーケティングチャネルを利用している場合は、利用を検討しているEコマースプラットフォームとの互換性を調べます。

9. 保管、輸送、フルフィルメント、顧客サービスを考慮する

物理的な製品の場合は、保管が重要になります。在庫保管場所の必要規模を決めるには、製品の製造から流通を経て顧客に届くまでのサプライチェーンをシミュレートし、在庫回転率を把握する必要が出てきそうです。

オンデマンドで生産・出荷される製品の場合は、保管場所を気にする必要はなく、販売した製品を輸送して購入者に届けるフルフィルメントを考慮するだけで済みます。

デジタル製品の場合は、保管・輸送・フルフィルメントは不要です。

いずれの形態の製品にせよ、購入前、購入中、購入後の顧客サービスも十分検討しなければなりません。

保管、輸送、フルフィルメント、顧客サービスのヒント

製造拠点が決まれば、保管場所や保管業者を探すことになります。製品を保管場所から購入者に届けるための解決策を見つけ、顧客サービスのために、顧客へのアクセスポイントを設定します。

保管場所を確保する
製造現場の近く、あるいは、ターゲット市場の近くで、保管場所を見つけます。保管は結構なコスト要因になりますので、注意が必要です。
シンプルにする
サプライチェーンのステップ数が多ければ多いほど、手続きが増え、エラーの原因も増えてしまいます。できるだけシンプルに構成することが肝心です。

10. 販売とマーケティングを行う

ここまで来れば、Eコマースビジネスの一連の構築はほぼ完成ですが、肝心の販売とマーケティングが残っています。興味のある人に知ってもらうこと、そして、購入してもらうための活動が必要です。

販売とマーケティングのヒント

販売やマーケティングのチャネルを決め、広告を出さずにリーチできる顧客を確保すべきでしょう。ブランドのミッションやビジョンを顧客に浸透させることは、事業を長期的に継続させていく上で有益です。

学習する
マーケティング戦略をいくつも試し、データを収集しなければ、有効なチャネルは見つかりません。様々な手法を試す段階で、投資が報われないことも出てきます。経験から学び、その学びを蓄積し、将来に生かすことができますので、失敗は無駄ではありません。
メール配信
電子メールマーケティングは、Eコマースに最適なチャネルのひとつです。メールの連絡先は有効なリードですので、活動を始めたばかりの頃から収集を始めまるべきです。

冒険の始まり

この10ステップを終えると、Eコマースビジネスは、1億人の市場にアクセスできる可能性を秘めたものとして成立しています。多言語対応すると、その市場は数十億人となるでしょう。

製品を販売し、人々が購入し、購入者がフィードバックをもたらし、それをもとに事業を改善し続けていると、事業を維持し、拡大したいと思うようになるかもしれません。

成功するか失敗するかは始めてみなければわかりません。事業を始めれば、冒険の第一歩を踏み出したということです。

芦屋 ときお

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ソフトウェアエンジニア(フルスタック、主にWeb系)。HTML, CSS, JavaScript, TypeScript, PHP, Python, Go, Vue.js, Express, Node.js, Nuxt, Next.js, Laravelなど。C#, ActionScriptも。デザイン、デジタルマーケティング。