ブランド・ポジショニング

フリーランス・中小企業のためのブランドポジショニング戦略

売上を上げるには、ビジネスを差別化し、競合他社に差をつけ、人々の心をつかむ、ブランドポジショニング戦略が有効です。これは、大企業であろうとフリーランスであろうと変わりません。

ブランドポジショニング戦略とは

ブランドポジショニング戦略とは、自社ブランドをターゲット顧客の心の中にポジショニングする戦略です。市場における場所ではなく、人の心の中の場所ということに注意しましょう。顧客がブランドをどう思っているかがブランドのポジショニングで、顧客にブランドをどう思わせたいかを戦略的に顧客の心に定着させる行為が、ブランドポジショニング戦略です。

新型コロナが猛威を振るう中、コカ・コーラやトヨタなど大企業が率いる聖火リレーの「お祭り騒ぎ」は、スポンサーではない報道機関から苦言が出されていますが、莫大な税金を使った官民一体でのオリンピック宣伝広報と、従順な国民性から、日本ではあまりイメージダウンにはならなそうで、ブランドポジショニングには一定の成果がありそうです。

ポジショニング戦略には様々な種類がありますが、いずれにしろ、顧客や市場へのメッセージに一貫性を持たせるための指針として使います。Lucidpressの調査によると、ブランドの一貫性を維持することで、平均33%成長したとの結果になっています。

そして、強力なブランドポジショニング戦略は、ブランド認知度の向上、顧客ロイヤルティの向上、マーケティングの効率化にも繋がります。

ブランドポジショニングは、ビジネスに直接関わりあるビジネスオーナーや経営者が作成すべきですが、もちろん、彼らと協力してマーケティング担当者が行うこともできますが、まるごと外注するようなことをすべきではありません。そして、ビジネスの立ち上げの最初、あるいは、ブランド変更の最初のステップとして行います。

ブランドポジショニング戦略において、メッセージング、グラフィクス、Webサイトでのマーケティング戦術、マーケティング販促資料、プロトタイプ製品などが決定されることになります。マーケティングチャネル全体で、あらゆるブランディングを整理するために、これらは重要になります。そして、広告やマーケティング全般に関わるトーンも含め、マーケティング戦略には欠かせないものです

ブランドポジショニング戦略の原則

マーケティングの原則(4P)があらゆる戦略に当てはまるとは必ずしも言えませんが、ブランドポジショニング戦略には、以下の重要な原則があります。

ゴールデンサークル

TEDで一躍人気を博したサイモン・シネックの「ゴールデンサークル」では、「Whyから始めよ」との主張がなされています。顧客には「What」ではなく「Why」を伝えるべきだというのです。

サイモン・シネック「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」

「高品質で美味しいコーヒー豆をお届けします!」という「What」はよくある文言ですが、これではまったく顧客の心に響かないので、なぜそのビジネスをしているのかという「Why」が重要になってくるということです。つまり、「Why」をビジョンに盛り込むことが重要となります。

誰にどのような価値を提供しているのか、どのような信念に基づいて事業を行っているのか、それが顧客の心を打ち、ブランドに興味を持ってもらえるきっかけとなります。

価値をつくる

自社(あるいは経営者やフリーランスであるあなた)やそのブランドを信頼する理由は何か、信頼してもらえる理由は何かを突き詰める必要があります。その商品やサービスを提供することがなぜ必要なのでしょうか。その商品やサービスを使う、あるいはブランドと関わることで、顧客は何を得るのでしょうか。

なぜ彼女は彼を恋人として選ぶのか、なぜ彼は彼女と友だちになるのかと同じ考え方です。

自社が他社とは違うこと、他社よりも優れていること、競合他社ではなく自社を選ぶのが正しいことを、顧客に伝えるための説得力のある理由が必要です。

その理由として、データ、ケーススタディ、お客様の声、他社との比較などを盛り込む必要があります。これらの証拠は、市場において他社よりも自社を際立たせ、なぜ自社を選ぶのが正しいのかを証明します。

抽象的なアイディアや理念で顧客を惹き付けることも重要ですが、真剣に受け止めてもらうには、具体的な理由を提示しなければなりません。

ターゲットを明確にする

デジタルマーケティング戦略では、誰に対してマーケティングを行うのかを、正確に把握しなければなりません。ターゲットが曖昧だったり広範過ぎると、顧客へのメッセージが混乱し、クライアントになってくれる顧客に焦点が当たらず、チャンスを逃してしまうことになります。

誰のためにブランドを構築しているのかを明確にし、それを元にポジショニングを考えることで、ポジショニング戦略はより合理的で効果的なものとなります。

ブランドとトーンを確認する

どのようなブランドマーケティング計画を立てるにしろ、全体を貫く一貫性が必要で、重要です。販促資料にしても、ビデオメッセージの声のトーンにしても、メールの文面にしても、これらすべてがブランドを表すものとなるため、全てにおいて同じことを言っているかどうかを確認し、一貫性を持たせなければなりません。

ブランドポジショニング戦略の成功例

ブランドポジショニング戦略を実行に移す際には、他社のブランドポジショニング戦略の成功例を参考にするのがよいでしょう。

テスラ

EV(電気自動車)の普及が進まない日本(日本語圏)では大規模なマーケティング活動をしていないテスラですが、最近ではModel 3を大幅値下げする価格戦略をとり、高所得層以外にもターゲット顧客を広げています。

テスラは登場当時から最新鋭のEVであり、高品質、航続距離の長さ、自動運転、安全性などを誇っていて、ソーシャルメディアでのマーケティングを中心に行い、巨大企業となっています。

「持続可能なエネルギー社会へ世界の移行を加速する」というミッションで、社会そのものを変える、すなわち、人の生き方そのものを変えるという壮大なポジショニングを貫き、このミッションを原則に製品のポジショニングも行っています。

H&M

H&Mは創業以来、「ファッションとそれがもたらす喜びを誰もが利用できるようにする」こと、すなわち、どのような生活水準でも利用しやすく楽しいものにするというビジョンのもと、低価格の商品を作る価格戦略で成功しています。

特権を持った人々だけではなく、すべての人々を公正に扱い、すべての人々の権利を支持し、多様性を尊重することで、ブランドのポジショニングを頑強なものにしています。

レッドブル

レッドブルは、商品の機能や性能についてはまったく宣伝せず、ただただデザインやキャッチコピーを通じて、その価値を訴え続けています。製品の説明は「ココロ、カラダ、みなぎる。」というキャッチコピーにわずかに添えられているだけです。

創業者のディートリヒ・マテシッツは、1984年から3年かけてブランドポジショニングやマーケティングコンセプトを開発し、若者の支持を集めて成功しています。

自社のブランドポジショニング戦略をつくる方法

ブランドポジショニング戦略をつくる際には、いくつかのステップを踏む必要があります。

1. ターゲット顧客を特定する

何を売ろうとするかを考えるだけではなく、誰に売るか、その「誰か」が何を買いたいと思っているのかを考え、そこからターゲットを絞り込んでいきます。

このステップでは、統計データを調べたり、フォーカスグループを活用したり、市場の動向を調査するなどのリサーチ作業が必要となります。

2. 競合他社を分析する

次に、市場での競合他社がどのようなポジショニングをとっているかを調査します。そのためには、競合他社を徹底的に調べ、細部まで知る必要があります。そうすることで、他社とは違うポジショニングをとりやすくなります。

競合他社の強みや弱みを知り、独自のポジショニングをとるにはどうしたらよいかを考えていきます。

3. SWOT分析をする

競合他社の強みや弱みだけではなく、自社の強みや弱みはどうなのかも分析しなければなりません。SWOT分析を行うことで、何が売れる要因となり、どう表現するとよいのかの見当をつけることができます。

強み(Strengths)
CMSソフトやアナリティクスのトラッキングなど、顧客からリードを生み出すのに有効なツールは何でしょう、また、最大の差別化要因は何でしょうか。
弱み(Weaknesses)
自社の弱みは何でしょうか。悩みや取り組みに時間がかかることや苦手にしていること、あるいはクライアントからどのような苦言を受けているでしょうか。
機会 (Opportunities)
自社の市場シェアはどの程度でしょうか。そして、最もうまくいっているマーケティングキャンペーンは何でしょうか。
脅威(Threats)
懸念する市場の変化や、将来の心配な点は何でしょうか。

4. セールスポイントを明確にする

ステップ3までで自社と競合とを詳しく分析したので、何が自社を際立たせ、何が最善かを明らかにできたはずです。自社を際立たせている部分に焦点を当て、それを差別化要因とします。顧客に独自の販売提案(USP)をすることで、顧客はブランドを見つけ、覚えてくれるようになります。

5. ポジショニングステートメントやキャッチフレーズをつくる

ターゲット顧客、自社の強み、競合他社との差別化要因を明らかにしたら、これらをまとめてポジショニングステートメントを作成します。

ポジショニングステートメントを先につくり、これを元にしてタグラインをつくります。言い回しを少し変えるだけで多くの意図を伝えられますが、タグラインにはブランドの説明と、ブランドが顧客に約束すること、このどちらも必要です。

そして、ターゲット顧客のバイヤーペルソナを参考に、注意深く、自社の利点と顧客の利点とが合致するようにします。このように焦点を絞ることで、キャッチフレーズがつくりやすくなります。

6. ポジショニングを改善する

ほとんど完成しましたが、顧客へのメッセージを洗練させなければなりません。顧客が直面している問題の解決策がメッセージに含まれていることを確認しつつ、進めていきます。

色、ロゴ、タイポグラフィ、グラフィック、パターン、トーン、言葉遣いなど、すべてをブランドガイドブックとしてまとめるとよいでしょう。Webサイトや販促資料をつくるのに役立ちます。

ブランドポジショニング戦略の最後に

ブランドポジショニング戦略は、マーケティングから、販売から、広告から、商品から、顧客対応に至るまで、常に同じトーンで同じ解決策を示し、一貫していなければなりません。そして、市場の状況や自社の強み・弱みを知ることで、ターゲット顧客を惹き付ける競合他社に負けないブランドメッセージをつくることができます。

芦屋 十貴夫

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あしやときおと申します。Webプログラミング、Webデザイン、マーケティングを生業としています。