ブランドロイヤルティ

ブランドロイヤルティを生み出す5つの戦略

コカ・コーラには様々なスキャンダルがつきまとっていますが、例えば直近では、大音量で騒ぎ立てるオリンピック聖火、オリンピックの火をナチスに共鳴して「聖火」と呼んで神聖なものとして扱うのは世界中で日本だけですが、それはさておき、その聖火リレーの醜悪さが非難されても、コカ・コーラの圧倒的な市場シェアにおいては、そのブランドにまったく影響を与えません。それほどブランドの構築は重要なのです。

「ブランド」と言うと、コカ・コーラの他に、Apple、NIKE、スターバックス、シャネルなどなど……、大企業や有名ブランドを思い起こしがちですが、あらゆるビジネスにはブランドがあります。中小企業にも個人事業主にも、コロナ禍でなんとか仕事を獲得しようとしているフリーランスにもです。

フリーランスとしての自分のブランドは、顧客に選ばれるかどうかの一要素となります。そして、なぜ自分が選ばれるのか、なぜ自分が選ばれないのかの大きな要因のひとつが、ブランドロイヤルティです。

顧客が同じブランドを何度も利用する理由は何でしょうか。それは、習慣的な理由からということでもありますし、意識的に選択しているからという理由もあるでしょう。

現在では、誰もがインターネットで簡単にブランドを比較検討し、選択できます。そのため、過去に比べてブランドロイヤルティが重要となっています。以下では、自社ビジネスにブランドロイヤルティを築くための方法を紹介します。

ブランドロイヤルティとは

ブランドロイヤルティとは、競合他社や市場環境の変化にかかわらず、顧客が同じ企業から製品やサービスを購入し続ける傾向のことです。

顧客の中で一旦ブランドロイヤルティが定まってしまうと、顧客は好みの企業から購入し続けるようになります。例えばAppleの新製品を楽しみに待ち、買い続ける熱狂的なファンを想像してみてください。

顧客があるブランドに忠誠を誓う理由は様々です。価値観に共鳴してブランドに感情移入している場合もあれば、製品の品質が良いと感じていたり、その企業から受けるサービスの質を好ましく感じているからの場合もあります。

ソーシャルメディアが発達した今日では、ロイヤルカスタマーが自分のSNSアカウントでブランドアンバサダーとなっていることもありますし、一方でブランドロイヤルティを脅かす危険も多くなっています。

Amazonのように、商品をワンクリックで購入し、無料で配送されるようになった今では、ロイヤルティはそれほど重要ではなくなっていて、実用的なことが感情的なことより重要だという考え方もあります。

しかし、Amazonで買い続けるのは実用的だからという理由だけでしょうか。

ここで、ブランドロイヤルティと顧客ロイヤルティについて考えてみます。

ブランドロイヤルティと顧客ロイヤルティとの違い

あるブランドに忠誠を誓う顧客は、そのブランドを購入するため、ブランドロイヤルティと顧客ロイヤルティは重なり合います。ただし、ブランドロイヤルティは顧客の認識、好み、態度のことで、顧客ロイヤルティは、購入、価格、収入など、金銭面において支出パターンとして測られる指標です。

ブランドロイヤルティは、自社の価値観、評判、顧客の自社への経験によって定められ、顧客ロイヤルティは、価格、割引、特典によって定められます。

顧客にとって価格は常に重要ですが、これを競争上の優位点としてしまうと、自社の立場は弱くなります。というのも、競合他社はさらに値引きすればよいのですから。

自社ブランドに対する顧客のロイヤルティを高めることは、より長期的な戦略であり、より幅広い利点があります。

ブランドロイヤルティの各段階

ブランドロイヤルティを高めるために、まずはブランドロイヤルティのピラミッド、ブランドエクイティピラミッドを理解することが必要です。

ケラーのブランドエクイティモデルとアーカーのそれが有名ですが、より顧客に重きを置いたアーカーのブランドエクイティモデルについて簡単に解説します。

ブランドロイヤルティの段階は、次のようになり、ピラミッドの上に進むほど強化されます。

ブランドエクイティピラミッド
アーカーのブランドエクイティモデルでは、顧客ベースの5段階に分類されます。
1. ブランドに無関心なブランドを乗り換える顧客・価格に敏感な顧客
どのブランドに対してもブランドへの忠誠心が全くない顧客です。どのブランドの製品やサービスを購入しても、特に気にならなく、次に買うときには前回何を買ったか覚えていないこともありますし、気にも留めません。どのブランドを選ぶかに関心がない「スイッチャー」または、価格によってブランドを乗り換える顧客です。
2. ブランドを乗り換える理由のない習慣的な顧客
このタイプの顧客はあるブランドを購入する傾向がありますが、こだわりはありません。そのブランドを習慣的に購入しており、そこそこ満足しているので乗り換える理由がありませんが、いつものブランドが見つからない場合には、わざわざ探さず、別のブランドを購入して満足します。
3. 障壁があってブランドを乗り換えない満足している顧客
自分が選んだブランドに満足していますが、ブランドを乗り換えるのにかかる時間、金銭的なコスト、別の製品の習得コスト、品質面の譲歩などの障壁があるために、ブランドを乗り換えない顧客です。これらの障壁が解消された場合には、購入するブランドに情熱を持っているわけではないので、ブランドを乗り換えることもあります。
4. 友人のような存在としてブランドを好む顧客
顧客がブランドに熱中し、真のブランド愛好家となる転換点です。このレベルの顧客は、なぜそのブランドが好きなのかを明確に説明できませんが、感情的になんとなく好んでいるため、そのブランドを購入し続けます。
5. ブランドを熱心に支持する顧客
顧客の日々の生活の中でブランドが積極的な役割を果たし、ブランドとの関係を誇りに思うほどになります。製品やサービスのブランドアイデンティティが、顧客の価値観と密接に結びついており、このブランドは顧客にロイヤルティの特典を与え、双方向の関係を維持しようとします。

賢明な方であれば、ブランドエクイティピラミッドの上層に、できるだけ多くの顧客に来てほしいと考えるでしょう。しかし、どうすればそのような顧客を獲得できるのでしょうか。

ブランドロイヤルティを築くための5つの方法

以下の5つの戦略は、初回購入後も顧客を長く維持するためのものです。

1. 購買意欲を高める

いくらカネを積んでもロイヤルティは買えません。確かに、顧客に金銭的な報酬を提供して、1回限りの購入を促すことはできます。しかし、真のブランドロイヤルティを獲得するためには、それ以上のものを提供しなければなりません。

ブランドにおける人間心理の研究によると、ロイヤルティは顧客と企業との間の価値交換の上に成り立っています。今日、私たちはこの仮説をいたるところで目にすることができます。

例えば、ザ・ノース・フェイスには、「XPLR Pass」というロイヤルティプログラムがあります(アメリカとカナダのみ)。限定コレクションなどへの早期アクセス、メンバー限定のフィールドテストと返品、下取り、専用カスタマーサービスなどが用意されています。

ザ・ノース・フェイス XPRL Pass
ブランドロイヤルティを築くためのザ・ノース・フェイスのロイヤルティプログラム

顧客に向けて、自分の会社がなぜ優れているかを発信するのもよいですが、顧客に提供できるインセンティブに焦点を当てることで、顧客の目に止まります。顧客が自分の話に関心を持つ理由は何かを考えます。ロイヤルティとは、双方向の価値交換です。

2. 顧客のストーリーの共有

企業の価値観、いわば人柄を示すことでもまた、顧客を惹きつけます。

企業のロゴだけではブランドロイヤルティを高めることはできません。例えばGoProは、顧客が素晴らしい動画をつくるための様々な必要なツールを提供しています。そして、顧客がコンテンツを共有するたびに、GoProのロゴも共有されます。動画は企業の広告となり、同時に顧客は自分の作品を広めることができます。

GoProの動画共有
GoProではユーザーの動画共有プログラムを提供しています。

また、GoProは「Be a HERO チャレンジ」で世界をより良い方向に変えるコンテンツなど、様々な共有コンテンツを提供し、賞金を得られたり自分が世界に貢献していると顧客が満足すると同時に、企業は無料で広告を出すのと同じメリットを得られます。

そうして顧客がサービスに感情的に愛着を持つことで、ブランドロイヤルティが向上していきます。また、新規顧客に対しても、この企業を肯定的に捉えてもらえます。

ブランド監査の一環として、すでに持っているリソースにも注目できます。例えば、社員のストーリーも使えることに気付くでしょう。

ブランドロイヤルティは、「自社は単に無機的な製品やサービスを提供しているだけではない」という前提に基づき、人間的な面を語るヒューマンストーリーは、この強力なメッセージを伝えるために考案され、各社が採用し、試行錯誤して成功につなげている方法です。

3. フィードバックに耳を傾ける

顧客のロイヤルティを維持するためには、単なる売り買いの取引を超えて、顧客の本心をつかむ必要があります。当然のことながら、Eコマースストア(日本語では「ネットショップ」)で商品を購入しただけでは、運営企業に自分の本心が伝わることはありません。

顧客の心を推し量るには、顧客に尋ねることが最も有効です。サービスの利用をやめた顧客にも尋ねるとよいでしょう。遠慮することはありません。顧客の意見を引き出せなければ、なぜ他社に乗り換えたのかを知ることができないのですから。

顧客に意見を聞く際は、フォームへのアクセスのしやすさが重要です。フィードバックを得たらそれに対応して変更したことを顧客に示すことで、顧客への約束を守る態度や正直さを示すこともできます。顧客は積極的にフィードバックフォームに記入しようとは思いませんので、慎重に作成する必要があります。

シンプルにする
顧客の時間をできる限り奪わないように、可能な限り単純明快にします。
評価スケールを設ける
5段階評価などを設けると、具体的な指標となります。
ほとんどの入力欄を任意とする
匿名でも問題ないでしょう。顧客が話したい意見を言ってもらえるだけで十分です。

また、ソーシャルメディア管理ツールを使って顧客の意見を追跡することで、サービスを変更したときにブランドロイヤルティに与える影響を確認することもできます。

4. 一貫性のあるコミュニケーション

ブランドのポジショニング戦略を確立したら、あらゆる顧客との接点で、同じトーンのビジュアルやコミュニケーションを適用します。Webサイトで発信していること、メールでの対応、TwitterやInstagramなどのソーシャルメディアでの主張が異なれば、信用を失います。

顧客はブランドと接するとき、どんな体験ができるかを知りたがります。これまでと同じサービスを受けられるのか、今後はどういうふうに変わっていくのかなどです。ロイヤルティは長い時間をかけて築き上げていくものですが、一瞬にして吹き飛ぶこともあります。

フリーランスや個人事業主を含む小規模企業者は、様々なチャネルで顧客対応するのは難しいかもしれません。毎日の顧客とのコミュニケーションに時間が取られすぎるのであれば、チャネルを絞り込みます。勢い外注に顧客コミュニケーションを任せがちですが、一貫したメッセージを発信できなくなる可能性が大きく、危険ですので、避けたほうがよいでしょう。

企業の規模を問わず、一貫性のあるメッセージによって、信頼を集め、ブランドに忠誠を誓う可能性も出てきます。

5. インフルエンサーとの連携

インフルエンサーは、顧客と感情的に結びついたときに最も効果を発揮します。状況を熟慮するに限りますが、インフルエンサーを活用して顧客にアプローチすれば、ブランドロイヤルティを構築するのに役立ちます。

単に人気のあるインフルエンサーに資金を投じてメッセージを宣伝してもらうだけではなく、ブランドの価値観を表明してくれるインフルエンサーを選ばないと、ブランドの信頼を損ないます。

例えば、私のように新型コロナへの日本政府の対応は犯罪的だと思ってそれに反対している場合、「検査は悪影響がある」「死者数は欧米より少ない」「コロナは風邪みたいなもの」「高齢者のために若者が犠牲になっている」といった悪辣な発言をしていたり、テレビに出てデマを言いふらす雇われ専門家、政治家、芸人、評論家、テレビキャスターらの発言を共有して日本政府を称賛したり同調しているインフルエンサーに仕事を依頼するのは、影響力がある分、顧客を大きく裏切る行為となり、逆効果です。

ソーシャルメディアキャンペーンを行う場合は、必ず数値目標を設定し、顧客エンゲージメントの指標を中心に計測を行い、目標が達成されているかどうかを確認します。

インフルエンサーは、確固たるブランド戦略の代わりにはなりませんが、自社メッセージを増幅するのに役立ちます。

永続的なロイヤルティの獲得に向けて

顧客のブランドロイヤルティは極めてデリケートで壊れやすいものですが、これまでに紹介したヒントや事例を参考にすることで、この重要なマーケティング戦略をより確固たるものにできます。

顧客との関係を築くのに近道はありませんが、努力を惜しまなければ、長期的にはロイヤルティで報われるはずです。

芦屋 十貴夫

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あしやときおと申します。Webプログラミング、Webデザイン、マーケティングを生業としています。